5-59 震える大地
「クゥゥン、ウゥウ、クゥ。」 クルヨ、ナンカ、クル。
何だか、嫌な感じがする。胸がドキドキする。何だろう。とっても、とっても、落ち着かない。
それに、見てよ。鳥が飛んでない。あれ? 空が、変だ。
「ワワン、ワン。」 ミテミテ、ネエ。
シゲさん、空を見て。いつもと違うよ。
「どうした? 上に・・・・・・鳥が、飛んでない。」
「シゲ! 来るぞ。」
「来るって、ノリ。何が」
「みんな、外に出ろ! 急げ。」
ノリが叫ぶ。
良く分らないが、何かが来る。家の中にいるより、外にいた方が良いのだろう。落ち着きのない犬たち。鳥のいない空。色も、違うような気がする。
「クゥ、クゥ。」 ウウ、クル。
「クゥゥン、ワン。」 クルネ、クル。
「ウゥゥゥ、ウワン。」 オチツケ、ミンナ。
「ククゥ、ワン。」 ソウダヨ、ソウ。
シゲコだけじゃない。ノリコも、シロも、クロも。ウロウロ、ウロウロ。
「みんな、起きろ! 温かくして、外へ出るんだ。急げ、急げ。」
「皆、いるか?」
「あぁ、いる。」
ドーン。グラグラグラァァァァァ。
突き上げるように、地が震えた。立っていられず、尻もちをついたり、転んだり。
「ワァァァ。こ、怖いよぉ。」
「みんな、落ち着いて。さぁ、いらっしゃい。」
「ウェェェン、コノさぁぁん。」
「ワァァァァ。」
「お、お母さぁぁぁん!」
「お母さぁぁん、お父さぁぁん。」
「火の山が噴いたってんじゃ、ないか。」
「タケ。なぜ、そう思う。」
センが問う。
「いやぁ、ね。火の山が噴けば、灰が降る。でも、ほら。何にも降ってこない。」
「みんな、案ずるな。この山はな、強いぞ。ちょっとや、そっとじゃ、崩れない。」
「ほ、ほんと?」
シゲコを抱きしめながら、ソラ。
「あぁ、信じろ。」
「カズが言うなら、そうだ。なぁ、シゲ。」
クロを撫でながら、ムロ。
「そうだ。みんな、落ち着くんだ。生きていれば、何とかなる。」
「でも、おうち。ペッシャンコ。」
サキが呟く。
「また建てればいい。」
コタの優しい声を聞き、俯いていたサキが顔を上げ、二コリとした。
「そうそう。燃えたんじゃない。チャチャッと、組み立てられるさっ。」
シンが明るい声で言った。
「そっか、チャチャッ。」
「チャチャッ。」
子らがキャッキャッと笑った。