15-33 ソコまで言いますか
杵築大社の使い兎は覚えていた。稻羽がフラフラしながら溜息を吐き、遠い目をしたらアブナイと。
木俣社からイロイロ届くし、モサモサする事が多くなっている。このままでは何れ、また。
「いぃやぁぁ。」
兎チャンず、絶叫。
「稻羽さまが居なければ、この大社は。」
大社は?
「兎の骸で埋め尽くされますぅ。」
ソコまで言いますか。
稻羽の優秀さは人の世はモチロン、隠の世にも轟いている。人の世、大蛇社から『使わしめに』と望まれれば。
「稻羽さま、行かないで。」
部下に囲まれた。
「隠の世でも人の世でも、喜んで御供します。」
退職する気マンマン。
「大実山の保ち隠は、御隠れ遊ばした大実神の。」
いえいえ人の世、良山に御坐しますヨ。
「夜の鳥、でしたか。」
ヘグは大実神に仕えていた元、使わしめの梟の隠。山で暮らしていた人が村を捨て、離れたことにより放たれ、保ち隠に転職。
人の世と隠の世にある良山は大実社を介して繋がっており、他より小さいが清らな地。近くに妖怪の墓場があり、住隠が当番制で管理している。
治めの隠も使い隠も居ないが、大蛇社の御膝元。問答無用で浄化されるので、悪さするヤツは居ない。
「コレ、離さんか。」
モフモフにグイグイされ、スゴイ事になっている。
「これから向かうのは鎮の西国、儺の琅邪。」
儺に取り込まれた琅邪が、儺国王の首を挿げ替えた。
「儺国と、いえば。」
モフモフず、パチクリ。
「他とは違う妖怪が王として、人を従えているトカ。」
琅邪女王と王弟は鬼、琅邪大王は半鬼。
「戦を終わらせた、とも聞く。」
はい、終わらせました。
もふもふズから解放された稻羽は、木俣社に顔を出してから響灘を越えた。神在団子を持って。
「真、だったか。」
遠目から儺升粒を見て、半鬼であることを確認。
「言の葉を操る兎、か。」
イオが微笑む。
「エッ。」
背後を取られた!
「お止め。」
ミチまで現れ稻羽、大パニック。
首の後ろをヒョイを抓まれ、赤い目を点にしたままプラァン。直ぐに尻を支えられ、ホッと一息。
ミチはイオと違い、兎の扱いに慣れていた。
「兎さま。」
ピクン。
「琅邪女王、卑呼女で御座います。」
アッ。
「杵築大社より参りました。大国主神の使わしめ、稻羽です。」
ペコリ。
琅邪女王、卑呼女と王弟、卑呼男は生き神。琅邪大王、儺升粒は半鬼で社の司でもある。
社憑きや継ぐ子が居ると聞いてはいたが、その数が多過ぎた。
儺国に滅ぼされ、儺国兵に殺された人。その隠が他の隠と融け合い、妖怪になったと知り頭を抱える。




