15-32 戻るから
儺国を支配した琅邪に、鎮の西国の十王が表敬訪問。連れてきた護衛は一人、二人。
皆、王と同じ膳だと知らずに平らげた。
「琅邪は豊かだなぁ。」
大王には、どんなモノが出されたのだろう。
「生まれ育った地から離れられないし、離れたいとも思わない。けど、暮らし易そうだな。」
うんうん。
十王に出された膳は皆、同じ。
吉舎は育ち盛り。大人と同じだけ出されたが、残さずペロリと平らげた。湯に浸かり、清め水をゴクゴク飲んで水分補給。
寝る前に用を足し、毛皮を被ってスヤスヤ夢の中。
「・・・・・・子だ。」
ココは琅邪。他の大王と一緒でも、安心して眠れます。
「寝るか。」
あんなに重かった体が軽くなったのは、琅邪と儺に決して仕掛けない。攻め込まないと誓った時。
「そうだな。」
己の体に何が起きたのか、考えても分からない。けれど生き残った。それで良いじゃナイか。
鎮の西国が、戦好きの集まりが変わった。と言って良い。
子が儺国王になったと聞き、酷く驚いたがナンテコトはナイ。あの小鬼は化けるぞ。いつの日か鎮の西国を統べる、大妖怪になるだろう。
今から楽しみだ。
「滑さま。」
「おっとイケナイ、気を引き締めなければ。」
琅邪女王と王弟は鬼、琅邪大王は半鬼。ソレを隠す事なく堂堂と暮らしている。
鎮の西国から奴婢、卑呼制度が廃止される日も近い。そんな気がする。
大陸から便りが届いた。琅邪大王に会いたいから、どんな手を使っても会わせろだ? ケッ。モチロン握り潰してやったさ。
甘いぞ、大陸妖怪。
「お待たせしました。」
大国主神の使わしめ、稻羽がタッタと現れた。中の西国も落ち着いたが、赤い目がギンギンになっている。
「会って伝えたい事とは。」
やったぁ! やっと、やっとグッスリ眠れる。
休みを取って一山に、は行けないか。日御碕に行こうかな。ワクワク。
「稻羽よ。ワクワクしているトコロ悪いが鎮の西国、儺国の外れに在る琅邪へ。琅邪社へ使いを、だな。」
後ろ足をタシタシするの、当たり前だよね。
「瓢の長、滑から話を聞いて。」
ゴクリ。
「神議りに、ね。」
有給たまってるんだから休ませて! なんて声が聞こえてきそう。この時代に有給休暇なんてナイけど、たぶんナイけど思うのよ。
・・・・・・疲れてる、のかな。うん、戻ろう。
「わかりました。先触れを出し、向かいます。」
キリリ。
「うむ、頼む。」
ドキドキ。
瓢の長、滑から報告を受けた稻羽が琅邪に向かう。それダケの事なのに。
「稻羽さま! お願い。行かないで。」
大社の使い兎に囲まれ、身動き出来ない。
「戻るから。務めを果たしたら戻るから、美味しい草を持って戻るからぁぁぁ。」