15-29 誰か引き受けて
儺国王が死んだ。そう聞いて思ったのは『またか』、だった。
儺は大国。その王は鎮の西国、十王になれるのだ。何も無ければ、その座を奪い合う事になるだろう。
「どう、決める。」
誰か引き受けて。
「話し合いで決めよう。」
家に帰りたい。
「ココは長く生き、いろいろ知っている頭が。」
は? ナニ言ってんの。
「いえいえ。ココは人の長である、社の司に。」
ハッ、こんな時だけ持ち上げやがって。
「彦さまを差し置いて、そんな。」
止めてくれよ、そんな器じゃナイ。
「ココは、どうだろう。琅邪大王に任せては。」
し・に・た・く・な・い。
うわぁ、逃げやがった。
揃いも揃ってコイツら、人の幸せを潰すダケ潰して、壊すダケ壊して。それでも逃げられると思っているのか。
「ユルセナイ。」
逃げるなら初めから、琅邪に任せれば良かったんだ。そうすれば村は、みんな死なずに笑ってた。今も幸せに暮らしていたのに!
「落ち着きなさい。」
「イオさま。」
吉舎は幼い。その小さな体に入った数多の魂が、砂時計に閉じ込められた砂のように訴える。
どんなに時が経っても、決して融け合うことはない。
一つ一つ違うんだ。右に流され左に流され、落ちて積もって落とされる。上から下に、下から上に。
声にナラナイ叫びが、その音に搔き消される。
外に出れば戻れない。角が取れて丸くなったソレは、小さな器の中で諦めた。サラサラさらさら、グルグルぐるぐる。
「誰もナラナイなら、なる。」
琅邪から、社から出たくナイけど。コワイけど諦めなくない。
「そうか。でも出なくて良い。」
「えっ。」
「琅邪社から通いなさい。」
「ハイッ。」
エッと、あれ。考えが、考えが纏まらない。琅邪は儺の一つ。その琅邪から通いでも、儺国王を務める者が出た。のは良いが、どう見ても子だぞ。
あの男、卑呼男に違いない。
琅邪女王の弟なら、毒使いなら儺国を立て直せる。その力を揮って、もっと大きく強く出来るだろう。
なのに子に、幼子に任せるのか。
「あの、ヒッ。」
息が、息が出来ない。
「アタッ。」
急に体が重くなり、膝から崩れて倒れた。
「ダズゲデ。」
強く額を打ち、頭の中が真っ白になる。
「ヴゲイレマズ。」
幼くても琅邪が認めた大王。
「ジダガイマズ。」
王弟が連れてきた大王。
「オネガイ、ジマズ。」
ま・だ・し・ね・な・い。
うわぁ、痛そう。雀でもチュンチュン鳴くよ。いやジュンジュンだね。
儺呼山に戻って見聞きしたコト全て、お伝えしなくちゃ。
「・・・・・・チュン?」
逃げないから、お願い。翼を広げたまま持たないで。
捥げる! 体の重みで折れちゃうからぁぁ。