15-28 若く見えるが
日に日に力を増す琅邪を、もう取り込めない。仕掛ければ潰され、いいや滅ぼされる。そうなる前に、違うな。
表向きは儺国を、真の王を琅邪大王と認めて話し合おう。
鎮の西国は大きい。だから十王で治め、他から守ると決めた。
儺国王が倒れても、コロコロ変わっても居ればソレで良いと思っていた。けれどアレはイカン。急ぎ議り、話を纏めなければ戦になるぞ!
「考える事は同じ、か。」
焼山に集まった九王、揃ってゲッソリ。
「琅邪大王、儺升粒は海を渡り。」
「あぁ。彼の地の王から、その昔。」
「親漢儺王の呼び名を。」
「・・・・・・若く見えるが。」
卑呼男、王弟イオは薬学に精通している。アレコレ処方しているが、その中に若返りの妙薬が。なんてコトはナイ。
けれど姉弟の周囲には、他より若若しく見える者が多い。
伏せられているが琅邪大王、儺升粒は半鬼。その体は少しづつ、人から離れている。
儺升粒の望みは琅邪を支配する事でも、儺国を潰す事でもナイ。琅邪の民が飢えず、凍えず、怯えずに暮らせる国にしたい。それダケ。
「女王、卑呼女は雨降らしの巫。」
「悪かった足が良くなった、とか。」
「女王が育てている桃の木には、秋でも多くの実を付けると聞く。」
ザワッ。
桃は四月頃、淡紅または白色の五弁花を開く。果実は多汁で甘く、ウットリするホド美味。加えて邪気を払う力がある。と、昔から信じられている。
その実が『秋になっても食べられる』と聞いて、ザワザワするのは当たり前。
欲しい! と思った。けれど琅邪は儺国の一つ。仕掛ければアレが目を輝かせ、泥沼の戦いが続くだろう。
儺国はオカシイ。穏やかな男が王になっても、賢い臣が王になっても戦狂いになるのだから。
「結ぶ、か。」
最後まで黙っていた珂国王が、良く通る声で一言。
「社を通して伝えましょう。鎮の西国、九王と会ってほしい。これからの事を話し合いたい、と。」
対国王が言い切り、微笑む。
「そうですね。」
「そうしましょう。」
嫌だイヤだ嫌だぁ! やっと、やっと大王になれたのに。儺国王になれたのに降りろ? 辞めろと、そう言うのか。
臣が大王に、このワシに。
「何をっ。」
グワングワンと世界が回り、後ろ向きにバタンと倒れた。後頭部を強打し、泡を吹きながら痙攣。
「お、大王。」
こりゃダメだ。
「お気を確かに。」
長くても夜、かな。
「儺呼山、いや琅邪へ使いを出せ。」
大王が死にそうです。次は儺からではナク、琅邪から選んでください。
犬が、犬が笑っている。
生きたまま、この体に食らいつくのか。その命を繋ぐのか、犬が。・・・・・・尾が垂れている、となるとオオカミ。大神で在らせられる、の、ですね。
お助け下さい、まだ死ねない。片づけなければイケナイ事が山のように、気が遠くなるホド残っているのです。だから傷を塞いで、琅邪に勝てる力を御与えください。
「じぃあぁく・・・・・・なぃ。」