5-58 直下型地震
乱雲山に来て、初めての冬。稲田の村より冷えるのだろうな、とは思った。しかし、これ程とは。
高く、高く積もった雪を、ポカンとしながら、仲良く見上げている。
ドーン。グラグラグラァァァァ。
「キャッ。」
「ツウ。」
抱きしめながら屈み、ジッとする。はじめは、ビックリした。でも、怖くない。
積もった雪が崩れて、ドサドサ降った。辺りは真っ白。日の光が透けて、明るい。
「ツウ、コウ。どこだぁぁぁ。」
ツルが叫ぶ。
「あっ、はい。」
揃って、スッと立ち上がった。
雲井社に戻り、ツウとコウは手を繋いだまま、大人しく座っていた。
「地が、な。」
「震えたのだ。」
「ブルブルッとな。」
サラッと、三妖怪。
「釜戸山?」
「違うと思う。」
見つめ合い、ニッコリ。
「コウ。なぜ、そう思う。」
キラが問いかける。
「灰が降りません。それに・・・・・・何というか、下からドーンって。だから、違うと思いました。」
「賢いな、その通りだ。」
コン、尾をワサワサさせ、ニコリ。
「魂迎湖の西、釜戸山みっつ、離れた辺り。浅い地で、震えた。」
ゴロゴロ、胸を張る。雲井神より、伺いました。
「魂迎湖って、どこにあるのかしら。」
ツウが呟く。
「確か、釜戸山の、ずっと西。」
「ホウ。良く知っているな、コウ。行ったことが、あるのか?」
キラ。キラッと、目を輝かせた。
「いいえ。爺様が昔、話してくれました。爺様の爺様の、その爺様が、魂迎湖の近くで生まれたと。」
「村なんて、あったか?」
「いいや。」
「産気づいた?」
三妖怪の名推理。果たして、結果は。
「その通りです。」
コン、大当たり!
「地が震えてすぐ、見に行った。地が割れ、段になっておった。」
キラ、ドヤ顔。
「地の深くに、筋がある。それが動いて、震えた。」
コンも、ドヤァ。
「乱雲山は、筋から離れておる。だから、強い。」
ゴロゴロ、力説。
目を輝かせるツウとコウ。乱雲山の、愉快な仲間たちは思った。
「和やかだなァ。」