15-27 この子の名は
お腹いっぱい食べ、寛いでいたら眠くなった。ゴロンと横になり、そのままスヤスヤ夢の中。
夛芸が抱き上げようとすると、目をクワッと開けてスススと後退る。ミチが微笑むとニコリとし、ストンと座って舟を漕ぐ。
「この子は継ぐ子として、社で引き取りましょう。」
琅邪で女王に逆らえる者はイナイ。
「なら離れ。よりも、そうだなぁ。」
イオに抱き上げられ、頬を寄せる幼子。
「姉さん、この子の名は。」
吉舎。儺国兵に滅ぼされた村の民は、その多くが戦で命を落とした。女と子を逃がし、戦って死んだから。
中には捕まる前に、生きることを諦めた者も。
死んだ子の魂が融合し、鬼化して直ぐソレとは知らずに逃がされた。それが、この子。それぞれに名が有ったが、数が多過ぎて一つに絞れない。
「吉舎。」
「それって、この子が生まれ育った。」
「えぇ、そうよ。」
生きていても、カンが良くても力が無ければ見えない。それが隠。
隠は何があっても、闇堕ちしても隠。妖怪は違う。その妖怪、最強と謳われるのが鬼。
森の中で行倒れていた鬼の子を見つけ、迷わず救おうとしたミチは思った。
幸せに、生まれてきて良かった。そう思えるように。強く生きてほしいと、真っ直ぐ育ってほしいと。
「あれ? ココは。」
そうだ。森の中で倒れて、風がフワッと吹いたんだ。でコウなった。
「おはよう、吉舎。」
「きさ?」
村の名だよ、それ。
「その体には数多の魂が入って、名を一つに出来ない。だから選んだの。」
「・・・・・・ありがとう。」
涙が溢れ、止まらなくなる。
闇堕ちする前に救い出され、琅邪社の継ぐ子になったと知った吉舎はオンオン泣いた。
琅邪女王も王弟も、己と同じ鬼。大王は少し違うが、人とは違う何かを持っている。
他にも似たようなのがチラホラ。
大泣きしてからモリモリ食べてグッスリ寝たら、頭と額から角が三つ、ニョキッと生えていてビックリ。何をドウしても引っ込まない。
『まっ、いいか』と開き直ったら、心の声が聞こえるようになった。
「他と違うコトは知っている。けどね、吉舎。そんな目で見ないでおくれ。」
琅邪大王、苦笑い。
「うぅん、ドウしよう。分らないや。」
両性具有。小柄で整った容姿をしているが警戒心の塊で、心からの笑顔は卑呼姉弟にしか見せない。そんな吉舎は角が生えると同時に、怪力と思念伝達能力を得た。
琅邪の社の司で、琅邪大王でもある。
人なのに人じゃナイ。鬼なのに、人と同じモノを持っている。そんな儺升粒を警戒して近づこうとシナイ。が、避けているワケでもナイ。
「儺の端、儺呼山かな。隠が増えました。悪いのはスッと消えたり『ギャァ』って叫びます。」
にこにこニコリ。
「そうか。」
いつか、心から笑ってくれる。そう信じよう。
「儺升粒さまって良い人? だよね。好きだよ。」
警戒が解かれるのは、ずっと先。




