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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
西国統一編
1308/1593

15-26 温かい食べ物は温かいウチに


あの生き物は、の男は怖い。恐ろしい。


笑いながら、楽しそうになぶるんだ。みんなヤツらに・・・・・・殺された。



もう何も見えない。でも聞こえる、いつまでも。


まだ聞こえるんだ。ヤツらに。ヤツらにアレコレされて叫ぶ、みんなの、みんなが泣き叫ぶ声が!




「あぁ、力があれば。」


バタンと倒れ、目から光が消えてゆく。


「ごめん。」


逃がしてもらったのに、死んじゃう。




会えるかな。死んだら、みんなに。笑って。


もう痛くない、苦しくない。寒いけど、そのうち何も感じなくなる。の、かな。



小さな村だよ。小さな里人が集まって、儺国なのくにから隠れて暮らそう。そう話し合って森の、山の奥に移り住んだ。


村の名は吉舎きさ。『のびやかに暮らせますように』って祈った時、曇っていた空がパッと晴れた。だから吉舎。


村の子なら、みんな知ってる事さ。




「姉さんが言っていた子・・・・・・じゃナイな。」


子は子だが、この子は鬼。


「オイ、諦めるな。生きろ。」


オジサン、だぁれ。




鬼から生まれた、いや違う。死んだ者の魂が一つになり、融け合ってむくろに入って鬼になった。そうと知らず、親か誰かに逃がされたのだろう。



儺国王が、大王おおきみが変わったのに繰り返す。儺国の民は、兵は腐っている、纏めて片付けるか。


今、動かなければ鬼が増える。


一隠では生きられない、まだ幼い隠が闇堕ちすれば歪む。姉さんはソレを、そんな事を望まない。




琅邪女王ろうやめのうの弟、卑呼男ひこおだ。」


ろうや? うぅん、何だっけ。


「ドコから来た。」


言わない!


女王めのうが御呼びだ。さぁ、おいで。」


逃げなきゃイケナイのに、体が動かないよぉ。






・・・・・・あれ?


「さぁ、お上がり。」


食べても良いの、これ。


「温かい食べ物は温かいウチに。」


そう、だよね。




ボロッボロだった衣をはががれ、湯の中に放り込まれた。それからゴシゴシ洗われ、湯が真っ黒になっちゃった。


髪も洗ってもらってスッキリした、のは良かったケドね。何だろう、この感じ。




「いただきます。」


パクリ。




美味おいしい。葉の物がイッパイ、干し貝も入った粥なんて久しぶり。とっても美味しいよ。


妹や弟、姉さん兄さん。母さん父さん、お爺お婆にも食べさせたかった。



・・・・・・弟なんて居たっけ。


アタシ姉さん、違う。兄さんだった。ん? そうだ! 父さんが戻らなくて、母さんに「逃げなさい」って。




「今は何も考えず、食べなさい。」


「はい。」


パクリ。モグモグ、ゴックン。






村の民は皆、死んだ。逃げた子の多くは捕まり「あの時、死んでいれば』と思うような扱いを受ける。


逃げおおせた子も死んだ。獣に襲われたり、弱って死んだ。



骸は獣に食われたり、腐ってバラバラになる。その魂は迷わず根の国へ。


人のときに残ったのは、死んだ子の骸に入った魂の群れ。


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