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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
西国統一編
1307/1594

15-25 あの空の下へ


儺国なのくにから奴婢ぬひが、卑呼ひこが消えた。


ガリガリに痩せて動けない者は琅邪ろうやに運び込まれ、動ける者は琅邪と結んだ地に移される。



生まれ育った地に戻りたい。そう願えばおさきみやしろを通して話し合う。


受け入れられれば戻れるが、断られる事が多い。






美味おいしい。」


瑞瑞みずみずしい桃に口を付け、ポツリと呟く。


「ユックリお上がり。」


コクンとうなずき、泣きながら食べる。




甘い実なんて久しぶり。


親と暮らしていた時は、秋になると猿梨さるなし葡萄ぶどう、柿の実を食べていた。干し貝や干し肉が入ったかゆを食べ、温かい家でグッスリ眠る。


ずっと、ずっと続くと思っていたのに壊された。



目の前で父が、兄が殺された。母が、姉がけがされるのを見せられ、動けなくなった。『同じ事されたいか。』そう問われ、漏らした。




蕎麦そばの粥、食べられる?」


パチクリ。


「粟やひえの粥が良いかしら。」


キョトン。


「焼いた芋や蒸した芋なら、きっと食べられるわね。」


涙腺崩壊。




蕎麦、粟、稗の粥も大好き。蕎麦は粥にしたり、粉にしてから練ったり、団子にして食べていた。火を囲んで、みんなで。




「さぁ、熱いわよ。」


器に盛られた芋は柔らかく、さじがスッと通った。それをフゥフゥしてからパクリ。


「甘い。」




山に囲まれた、とても小さな村だった。


平らな地に手を入れ、耕してイロイロ植えた。芋や豆、葉物。偶に商い人が干し貝や干し魚、若芽わかめを持ってきてくれた。



獣の肉や皮と、海の食べ物を換えてくれたんだ。とっても優しくて、『またね』って。・・・・・・なのに死んでた。


川に落ちたのか、捨てられたのか分からない。腹を熊に食われて、転がった首が。顔が。




「琅邪には酷い事をする人も、奴婢も卑呼も居ないの。卑呼女ひこめさま、卑呼男ひこおさまが儺升粒なしょぶさまと力を合わせて、悪い王やおみを追い払ってくださったのよ。」


琅邪に居れば、もう嫌な事されない?


「ゆっくり休めば、また歩けるようになるわ。」


コクン。


「生まれた地に戻りたい?」


フリフリと首を横に振る。


あんなに荒らされたんだ、戻れないよ。


「そう。」




儺国のつわものに攫われ、朝から夜まで働かされた。それから穢され、逃げたら捕まって奴婢に。



足を折られた。逃げられないように、逃げようと思わないように。その次の日、外がザワザワして静かになった。


死ぬのかな、殺されるのかな。痛いのは嫌だなって。




つえは要るだろう。けれど、きっと歩ける。」


歩ける?


「走るのは難しくても、外に出られるわ。」


また、あの空の下へ出られるの?






幼子おさなごを攫い、娘になったら穢す。飽きたり逃げたら奴婢として売り払う。そんな蛮行を繰り返し、儺国は大きくなった。


儺国王は十王の一人。儺国を滅ぼしても、また同じようなのが就くダケ。だから琅邪が操る。


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