15-24 忍びじゃなくても
琅邪には失われた毒が、使っても分らない毒が有る。そんな話が鎮の西国ダケでなく、中の西国にも伝わった。
「怖いねぇ。」
ポリポリ、モグモグ。
「恐ろしいねぇ。」
パリパリ、モグモグ。
「調べに行く?」
・・・・・・ゴックン。
霧雲山の統べる地で暮らす忍びは結び、アチコチで仕入れた情報を共有。社を通して繋がる事もある。他の忍びは基本的に結ばず、隠れ里から依頼主の元へ。
アレコレ伝えあうのは同じ里で修行し、探るために離れた忍びダケ。
「琅邪から戻った忍び、居たか。」
パチクリ。
「いやぁ、覚えがナイなぁ。」
ウンウン。
「誰が行く?」
キョトン。
幾ら鍛え上げても、逃げ足が速くても死ぬ時は死ぬ。
とはいえ、忍びだって長生きしたい。柔らかい衣を着て、美味しい物を食べて、温かい家でグッスリ眠りたい。
『おはよう』と言ったら『おはよう』って返ってくる。出掛ける時『いってきます』と言ったら、『いってらっしゃい』って見送られる。『ただいま』って戻ったら、『おかえり』って出迎えられる。そんな暮らしを、幸せを感じたい。
「琅邪には近づかない。」
「うん。」
「そうしよう。」
話が纏まった。頭から何を言われても、プイッとして逃げる。
命は一つ。強く言われたら『頭がドウゾ』と言って、ニコニコすれば良い。
己が嫌だと思う事は言わない、させない。これ当たり前。忍びじゃなくてもシッカリ守ろう!
「また変わったのか。」
十王のうち、儺国王だけコロコロ変わる。
「琅邪に仕掛けたんだろう。」
鎮の西国はモチロン、中の西国の王も知っている。琅邪に手を出してはイケナイと。
「琅邪の神は生き神らしい。」
琅邪女王、卑呼女は雨降らしの巫。軽い病なら癒せます。
重くなる前に、お越しください。
「ダズゲデ。」
儺国王が手を伸ばす。
「モヴ、ジマゼン。」
琅邪と結んだ里に押し入り、娘を攫って組み敷こうとした。直ぐに引き剥がされ、首を絞められる。
「ジニダクナイ。」
気が付けば暗く、狭い獄に入れられていた。
『玉と根を取られ、嬲られるか。新しい薬を試すか。』そう言われ、杯を奪い取った。
毒だと知っていたら杯を取らなかった。女を抱けなくなっても、尻の穴に突っ込まれても死ぬよりは良い。
「グルジイ。」
腹が黒くなり、足の色が変わり、動かせなくなった。
「ガァザン。」
腸が腐ったのか、息をするのも辛い。
「ドォザン。」
目が翳む。
「ゴ、メン・・・・・ナ・・・・・・ザイ。」