15-23 心から願う
鎮の西国、中の西国も落ち着いた。のだが、大王の目を盗んでアレコレ企む輩は居るモノで・・・・・・。
「分かりません、で済むとぉ」
バタン。
「大臣? キノコに中ったのかな。」
臣が近づく。
「ヒッ。しっ、死んでるぅ。」
やっと落ち着いたのに、また戦を仕掛けられてはタマラナイ。だから動きました。
「イオ。」
「はい、ミチ姉さん。」
琅邪で作られているのは一度、失われた猛毒。
儺国王に騙され、滅ぼされた里や村。儺国に取り込まれ、滅ぼされた国。その多くが他とは違う『何か』を持っていた。
生きたくても生きられなかった人が隠になり、生まれ育った地に戻り涙する。
『あの時、騙されなければ今も。』そう思うと、悔しくて悔しくて堪らない。
そんな隠たちに声を掛け、失われた術を受け継いだのがイオ。
儺国を内から壊し、琅邪社が裏で支える。そのために強い力が要るんだと伝え、教えを乞うた。
「体を壊すわ。少し休みなさい。」
「ありがとう。」
禁制品の発注先は、その大半が儺国。大王や大臣、臣の首を挿げ替えても、次のが同じ事をする。
呪い、としか思えない。
山頭や海頭など、選ばれてなる人は引き受けない。王の器じゃナイとか、臣なんて向いてナイと言って。
それでも頼み込んで受けてもらっても、他のが足を引っ張って壊れてしまう。
「姉さんもホドホドにね。」
「えぇ、そうするわ。」
琅邪女王は生き神。乾いた地に雨を降らせ、荒れた地を豊かにする。病に苦しむ人に触れ、少しづつ癒してくださる。
全ての人が助かるワケではナイけれど、軽い病なら癒えると聞き、遠くから琅邪を訪れる人が増えた。
鬼なので人より早く動けるし、力だって強い。だから琅邪と結んだ里や村、国に頼んで分社を建ててもらった。
琅邪まで行かなくても、儺国に組み込まれた地に行けば助かる。助けたい、守りたい人が、もう一度。
「ウンと水を飲んでもらって整える。それダケなのに、何だか悪いわ。」
「そんなコトないよ。血の巡りを良くして、悪いのを体の外に出す。その手助けが出来るのは姉さん、琅邪女王だけなんだ。」
「ありがとう。」
毒消しを作る力なんて無い。
いつか中の東国、大貝山の統べる地に在る早稲。霧雲山の統べる地に在るという良村、嵓にも行ってみたい。
良村と嵓は難しくても早稲なら。聞いた話を纏めるとね、そんな気がするんだよ。
早稲は風見と結ぶ、戦好きな村らしい。でも思うんだ。耶万から離れたなら、そんなに悪い村じゃないって。
長とか頭が変わったんだよ、きっと。それで昔、早稲を出た人が戻った。いやソレは無いな。
戻らなかったけど話したり、商いが出来るようになったんだね。
「あのさ、思うんだ。いつか琅邪が儺国を、裏から動かせるようになったら変わるって。儺国から戦が無くなって飢えたり、凍えたりして死ぬ人が無くなるって。」
「そうね。」
姉弟は心から願う。己らと同じ思いをする人が琅邪だけでなく儺国から、やまとから居なくなることを。




