15-21 酒、飲みに来たんですか
大陸から持ち込まれるハズだった叢闇が、手に入るハズだった品が全て、残らず、丸ごと冷たい海に沈んだ。
結果、不逞の輩がワラワラ集まり大騒ぎ。
慌てるのは当たり前。アンな事やコンな事を、アッチやコッチで行うハズだったのに、アテにしていたブツが入らない。
引くか? いや引けん。となればドウする。
「おやおや、こんなトコロに。」
ニヤッ。
「ねっ、ねっ、猫又ぁ。」
「確かに猫又さ。でもね、アタイには『流』って名があるんだよ。」
そのニャンコ、狂暴。触れるな危険、ナメるな危険。取扱注意!
見た目に騙されてはイケナイ。懐にハンムラビ法典の一部が記された巻物を入れている猫又は、世界広しと言えど流ダケ。
「ニャンだい、その目は。」
ギラン。
流は中の東国、神成山に御坐す渦風神の使わしめ。基本的に中の東国から出る事は無い。
そんな御猫サマが遠路はるばる、わざわざ西国まで出たのはナゼか。
「『美味い酒が飲める』ってんで来たのに、ニャンだい。邪魔すんじゃニャイよ。」
プリプリ。
「へ?」
酒、飲みに来たんですか。鎮の西国まで。
「鰹節シャブりながらチビチビ飲むツモリだったのに、見な。削ってナイのにコンナだよ。」
チマッ。
「岳辻でチーズを仕入れるか。」
岳辻は鎮の西国、岐国に在る。
玄武岩に覆われ、低平な台地状を呈し、最高点にあるのが岳辻。隠の世に繋がる御山は険しく、誰も近づかない。
治めの隠は牛神で、やまと最古の牛の隠神で在らせられる。
特産はチーズ、バターなどの乳製品で、神神に大好評。完全数量限定品なので、予約してから来店しましょう。
因みに鰹節は南国、切猪で仕入れました。
「『ふぉあぐら』って知ってるかい? 西側で作られる珍味でね。檻に閉じ込めた鵞鳥や鴨を強制的に太らせて、肥大した肝臓を取り出して食らうんだ。アタイは食べたコトないんだけど、どんな味がするんだろうね。」
ニヤリ。
「・・・・・・ちんみ? きょーせー? ひだい?」
ヒアリング能力は高い、らしい。
「『珍味』は珍しい、味の良い食べ物。『強制』は力で捻じ伏せ、従うように仕向ける事。『肥大』は腸とかが、他より大きくなる事さ。」
ヒエッ。
「わっわっ、ワシは美味しくアリマセン。」
ガクガク、ブルブル。
狭いトコロに閉じ込め、ブクブク太らせてから腹を裂く。他より大きくなった腸を抜いて、ソレをムシャムシャ食べると言う。信じられない。
死にたくない。幼子が居るんだ、死ねないよぉ。家を出るまで、叶うなら孫が生まれるまで・・・・・・。お願い、殺さないで。
「これまで幾つ奪った。どれだけ殺した。」
えっ。
「気が変わった。」
長い爪をシャキンを出し、シュパン。