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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
130/1572

5-57 激震


何の前触れもなく、滅ぼされた村、三つ。人々は畏れ山ではなく、魂迎湖たまむかえのみずうみあがめていた。それは良い。崇めたい神を、崇めれば。



戦人いくさびとを集める、そんな事のために、多くの命が奪われた。若い男は残らず、縛られたまま、歩いて舟へ。残った村人。嬰児みどりごから、年老いた者まで、皆殺し。


その魂は、悪しきモノに奪われ、村に戻ること、叶わず。悪しきモノ、さらに求め、霧雲山のべる地へ。しかし、奪った魂をはらい清められ、干乾ひからびた。



統べる最果ての地で、何が起こったのか。御知りなされた火炎神ほむらのかみ。統べる地の隅々まで、やまいぬを遣わす。




統べる地に暮らす、多くの命が奪われた。そのことに気づかなかったのは、妖怪の、いや私の落ち度。決意したコロ。祝辺での磨き鍛えを、血を吐く思いで願い出る。


噂以上に厳しかった。しかし、耐えた。火炎神の御為おんため、畏れ山が統べる地に暮らす、すべての命を守るため。



元々、逞しかったが、祝辺から戻ったコロは、別犲。精悍な面魂つらだましい、圧倒的な強さ、際立つ存在感。テキパキ働き、纏め役に徹する。前車のてつを踏むなど、有り得ない。




畏れ山が統べる、東の果ての地にて。風見が『滅ぼした村の跡地』に、人を集めているとの知らせを受けた。



「なにぃ! またか。まだ、足りぬのか。」


「そのようです。」


「守は。」


「畏れ山の統べる地にて・・・・・・。」



統べる地が違えば、手出しなど。目に余るようなら、使いを出し、伝えるのみ。山守社やまもりのやしろからは、何も。



「で、村の跡地は。」


「三つ、すべて。弓に刃、矢に毒。霧雲山の統べる地へ、戦を仕掛けるため。多く集め、置いて。」


「暴れ川を上がれば、霧雲山なのであろう?」


「はい。」


「ならば、なぜ。跡地から、遠い。違うか?」


「祝辺の守。統べる地を脅かす、全て。除いておいでです。」


・・・・・・全て。除く、か。



「そのため、畏れ川から。」


「コロ。我には、分からぬ。なぜ、奪う。なぜ、襲う。なぜ・・・・・・慈しめぬ。」


「人の欲は、底なしです。」


・・・・・・。




「急ぎ、お伝えしたく。」


見張りの犲が、息を切らせながら、飛び込んできた。


「申せ。」


「村の跡地より東。風見の者が、兵を進めよと。魂迎湖から、釜戸山。祝を殺め、大川。深川を下り、山裾の地へ。」


「なっ!なにぃぃぃぃぃぃ。」


青筋を立て、御叫びさった。犲たちは怯え、ピタッとうように平伏す。



火炎神の怒り。畏れ山を飛び越え、滅ぼされた三つの村の、真ん中へ。

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