15-17 そろそろ良かろう
鎮の西国には十の大国があり、その一つが儺。
儺国王は戦好きで、回りの里や村を国にさせてから潰して楽しむ。
そんな外道を潰したサミが病に倒れ、はじめに取り掛かったのが隠れ里を守る事だった。
「ヌシは知らぬだろうが、ずっと昔の話だ。『儺国王から力を奪い、操ってくれ』と頼まれてな。」
琅邪女王、ミチが微笑む。
隠れ里は他とは違う。
恐れられるような『何か』を持っていたり、姿形が整っていたり、人とは違う事が出来たりした。ソレを隠すため、森の奥深くで暮らしていたのだ。
誰かが守らなければナラナイ。
次の王にアレコレ叩き込んだが、その次代はダメだった。控え目に言ってグダグダ。
儺の大王に使い捨てられ、狂ったように笑いながら死ぬ。
「ナッ、アッ。」
毒が回って動けない、上手く話せないダケ。考える事は出来る。
サミの孫が滅ぼした里の中に『儺呼の里』があった。
儺呼山にあった隠れ里は多く、表に出ていたのは『镾艸』。御山にあった里を守り、導く守り人が暮らしていた。
毒の扱いに長け、争いを好まない民は隠す。守らなければナラナイ術を、その命を散らして。
「わかるか? 守るとは戦う事なのだ。」
琅邪の民には優しい声を出し、微笑む女王。
ミチはイオを守るため、言の葉に出来ない扱いを受けた。イオはミチを守るため、命を奪う術を身に付ける。
卑呼なのに残ったのは互いのため、生きる事を諦めなかったから。
「守りたい人を殺し、焼いて葬ってから後を追う。生きたくても生きられなかった者の思いが、叫びが聞こえるか。」
奴婢の子だからと小さくなって生きていた。
前を向いて歩いてはイケナイ、端を歩かなければイケナイ。泣いても笑っても、叫んでもイケナイ。
そんな姉弟を見守るしかナカッタのが、儺国王に恨みを抱きながら死んだ隠たち。
ずっと、ずっと傍に居た。その目に映らなくても、その耳に届かなくても諦めず。
「そろそろ良かろう。」
ミチが力を揮い、押し込んだ毒を胸に集めた。
「アッ、あぁぁぁ。」
儺国から来た使いが、釣り上げられた魚のようにビチビチ暴れる。
「うん、聞いた通りだ。」
イオが微笑み、重力操作。
「グヘッ。」
男の目から光が消えた。
「踊れ。」
儺升粒が男の額を指でツンと突き、傀儡に変える。
おお、大事だぁ! 儺国が、琅邪から戻った使いが毒を。
ん、あの毒。ドコカで見た、いや知っているような気がする。
「ハッ、今じゃない。」
急ぎ、御知らせシナケレバ。
「キョキョキョキョ。」 オモイダシマシタ、アブナイデス。アレハドクデス、アブナイデス。
儺呼山社に戻った夜鳥、大慌て。
「落ち着きなさい、夜鳥。」
「キョキョッ。」 ハイ、ナコヤマノカミ。
きゅるん。




