表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
西国統一編
1296/1591

15-14 強く望んでも、手に入らないモノがある


儺国なのくにはしそびえる儺呼なこ山。


そこそこ大きな山だが『山に入れば呪われる』と思われているので、豊かなのに里も村も国も無い。






「火付け、ですか。困りましたね。」


おっしゃり、儺呼山神なこやまのかみが御力をふるわれる。


「チュン。」 キエタ。


千声ちもり、ピタッ。


「キョキョキョ。」 ヨカッタ、ヨカッタ。


夜鳥やとりが胸をで下ろす。


「私、儺国にガツンと」


「お止しなさい、長生ななり。」


「はい。」


スススと下がった。




儺呼山に火を放ったのは人。


毒を飲まされ、呪いをかけられたのだろう。この感じ、強い鬼に違いない。このあたりだと琅邪ろうや






「ごめんください。」


琅邪の社憑き、夛芸たぎが微笑む。


「はい、ただいま。」


出迎えた長生が息をのむ。


三つ角を持つ大柄な鬼の口元から、鋭い牙がチラリと見えたから。


「琅邪から参りました。社憑きの夛芸と申します。」


「ヒャイ。少し、お待ちください。」






琅邪はいくさを望まない。


仕掛けられる前に潰すので、責められる事は無いのだけれど、通す筋は通さなければイケナイと思っている。だから使いを出した。



今、琅邪に居る社憑きは夛芸だけ。助けを求めて集まった鬼は多いが、落ち着くまで匿っている。


望むならひょう明里あかり空嶽うつおだけにと考えているが、これからドウなるか分からない。




「そうでしたか。」


儺呼山神、思わずゴクリ。






御山に『火を放たせた』のではない。儺国王を蒸し焼き、コホン。黙らせるため『近くに』と、そう命じたダケ。


その結果がコレ。



迷惑を掛けたのだ、謝罪するのは当たり前。


ミチはイオに『夛芸を儺呼山へ』と伝え、蕎麦団子と酒を持たせて送り出した。






「琅邪は海にも山にも近く、開けた地。米・麦・粟・豆・きびひえなど、とても良く育ちます。」


ニコリ。


「それはうらやましい。」




儺呼山社が在るのは廃村跡。


村が在ったのだ、開けている。けれど残念ながら、作物の育ちはイマイチ。



儺呼山神は山神で在らせられる。


山の幸ならタップリ、ドッサリ。けれど・・・・・・強く望んでも、手に入らないモノがある。




「試しに造ったのですが、とても美味おいしく出来ました。どうぞ、お召し上がりください。」


小さなかめの中からタプンと、心地よい音が聞こえた。


「ありがとう。」


わぁい♪






酒は日本特有のアルコール含有飲料。


清酒、合成酒、味醂みりん、白酒などがある。その歴史は古く『日本書紀』に記録があるが、現在の清酒に近い形をとったのは江戸時代以降。


合成酒はアルコール、糖分、酸、アミノ酸その他を調合して造られるモノで、その始まりは大正時代。



古代の酒は口噛み酒。


デンプンを持つ食物を口に入れて噛む事で、唾液中のアミラーゼがデンプンを糖化させる。ソレを吐き出して溜めておくと、野生酵母が糖を発酵してアルコールを生成するのだ。



神事でかもす場合、原料を口で噛むのはめかんなぎ処女しょじょが選ばれていたトカ何とか・・・・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ