15-8 どうなるか、わかるね
何だ、この生き物は。
隠。いや違う、と思う。なら何だ。考えろ、考えるんだ。姉さんに見せる前に、ん? 生き物なら毒でドウにか出来るか。
「プルン♪」 ソンナニ、ミツメナイデ。テレル。
動いているんだ、生き物に違い無い。痺れさせ、られるのか。
まん丸いが体、だよな。小さいから少なくして、いや待て。苦しんで大きくなり、暴れたら危ない。
「プルルン♪」 コマッタナ。ココロノコエ、トドカナイヤ。ヨシ、カエロウ。
湯溜の社憑き、無形が焼山に戻ろうとした。その時。
「プルッ♪」 キコエタ。
「エッと、その生き物は。」
大きな雫? 動いているから隠、新しい妖怪かな。冷たくて柔らかそう。
琅邪王、儺升粒。心の中で大騒ぎ。
「社に近づいた・・・・・・、何かさ。」
イオの眉がピクンと動く。
とても分かり憎いが『もっと近づいて調べたい』と、目をキラキラ輝かせている。
「イオ、その生き物は湯溜神が焼山から、琅邪に遣わし為さった湯溜の社憑きよ。」
「姉さん、もしかして。」
先見、いや先読の力を手に入れたの?
知らせる前にイオが無形を見つけ、あれこれ考えてしまう。良い事なら何も言わぬが、浮かんだのは悪い事。
このままでは琅邪が荒れ、いや滅ぼされる。毒を盛る前に止めなければ。
「その生き物に手を出せば、どうなるか。わかるわね。」
「ハイッ。」
イオは『お姉ちゃん大好きっ子』。ミチの言う事に従い、その後でアレコレ策を巡らせる。
思う事はイロイロと有るが、ニコニコ笑って引いた。
「プルンプルン♪」 コノオニタチ、コワイナ。ナカヨクシヨウ、ソウシヨウ。
「無形さま。」
「プルッ♪」 ナニカナ、ナニカナ。
「琅邪は他に仕掛けたり、攻め入ったり、人を酷く扱う事も御座いません。我ら三鬼、力を合わせて尽くします。」
そう言って頭を下げたミチ。イオと儺升粒もスッと背筋を伸ばし、深深と一礼。
新しい儺国王は弱い。だから話し合いで、と考えている。でもアヤシイ。悪い事を考えている目だよ、アレは。
少しでも気を抜けば攻め込まれ、全てを失う。その前に力を、守りながら戦える力を手に入れなければナラナイ。
そう考えるんでしょう? 人って。
琅邪の女王は賢い。王弟と大王を従え、琅邪だけは守るだろう。
琅邪王が鬼になったらドウするのか、今は分からない。けれど人の世に居る間は、きっと良い働きをする。
そんな気がするんだよネ。
「プルン♪」 ワカッタ、シンジルヨ。
琅邪の女王には雨を降らせ、地を潤わせる力が有る。ソレがいつ、何処で動き出したのか分からない。けれど儺国ではナク、琅邪で生まれた。
神の思し召し。だと思うのだが、どうしたモノか。いや違う、諦めたら終わりだ。気を強く持て。
「出なければ引き込めぬ、攫えぬ。」
物騒なコトを呟く儺国王。
「大王、琅邪から手を」
「引かぬ。」