15-6 集中しよう!
鎮の十王が集まり、話し合う事になった。場所は中央に聳える焼山。
「若いな。」
筐国王が呟く。
「戦、という話は聞きませんが。」
筑国王が微笑む。
「病か何かが流れたのでしょう。」
熊国王が言い切った。
鎮の西国、南に位置する筐国。その北東に筑国、北西に熊国が在る。
何れも儺国から遠く離れているので、琅邪に手を出さなかった。
「雨が降っても。」
分国王がポツリ。
「直ぐに止んでしまう。」
崎国王が続ける。
「困ったモノです。」
糟国王が溜息を吐く。
筑国の北に分国。熊国の北に崎国、その北に糟国が在る。
先の三国同様、何れも儺国から遠いので手を出してイナイ。
「雨降らし。」
珂国王がニヤリ。
「エッと、そうですね。」
儺国王、冷や汗ドッバァ。
「降レば、良いですね。」
岐国王の声が裏返る。
「大陸から入った品に『鳴らすと雨が降る』と言われるモノがありました。」
対国王、頭をポリポリ。
儺国の南に珂国。糟国の北に岐国、その北に対国が在る。
対国と珂国は、ずっと前の大王が『中の東国に手を出すな』と。その次の大王が『他に仕掛けるなら、死に絶える気で攻めろ』と言い残している。
それが語り継がれ、両国の目は内に向けられた。
「ホウ。その品、幾つ入ったのですか。」
珂国王、興味津津。
「三つ入りましたが、全て中の西国へ。ウチに前のが一つ。宜しければ、お譲りしましょうか。」
「はい。お願いします。」
かつて早稲近くの掘っ立て小屋で、八人の子が救い出された。
その中に珂国から攫われた長の娘、ミア。対国から攫われた兵頭の倅、カセ。儺国から攫われた王の末娘、ココが居た。
珂国の長と対国の兵頭は知らせを受け、急ぎ儺国に向かった。けれど引き返す。遠くから『父さん、国に戻って』と聞こえたから。
声にナラナイ声を上げた二人の父は従った。『あの子は死んでしまったが、遠くから見守っている』と。
珂国、対国ではキチンと語り継がれたが儺国は違う。
ココの兄、サミは好戦的だが引き際を見極める事に長けていた。若くして病に倒れる前から倅に帝王学を叩き込み、立派に育て上げる。
問題は、その次。
「おや、儺国王。どうされました?」
顔色が悪い、なんてモンじゃない。真っ青を通り越して真っ白。
「いえ、その。お気遣い、ありがとうございます。」
十王の中で最も若いのが、即位ホヤホヤの儺国王。
ココは外交の場。年齢を言い訳にすれば十中八九、失敗する。国益を損ね、いや損ねる。
今は琅邪問題より、十王会議に集中しよう!