15-3 過剰戦力?
悪い顔をして笑っているのは伯耆の社憑き、守り海頭の波子。海の守り、伯耆海軍大将を務める和邇の隠である。
その隣で四肢を動かす伯耆の社憑き、守り陸頭の猪突。陸の守り、伯耆軍陸軍大将は猪の妖怪。泥浴を満喫し一っ風呂、ではなく一泳ぎ。
「ふぅ、スッキリした。」
ブルルと体を振り、水気を飛ばす。
「突くぞ。」
と言ってから探知、思い切り猪突の額に鉤状の嘴を立てた。
「フギャァッ。」
尖ったトコロでブスリ。そりゃぁ、痛いよ。
伯耆軍、三大将。海から近い川辺で作戦会議中。
「真中の七国が一つになり、力を蓄えている。ソレを知った鎮の西国、中の西国の大王が騒ぎ出す。」
探知が腐肉に食らいつき、ゴックン。幸せそうな顔で死肉をムシャムシャ。
「よく食べるね。」
波子、呆れ顔。
和邇も肉食だが、捕れ立てピチピチの肉が好き。
安蓺、穴門、出雲、因幡、磐現、吉備、周坡、伯耆。何れも海に面している。
「出雲は戦いに向かぬ。」
大国主神の使わしめは兎。社憑きも、その大半が兎チャン。後ろ足をタシタシしながら頑張ってマス。
「向かぬが、あの兎。」
和邇を騙して海を渡る知恵と度胸、大陸妖怪を黙らせる覇気も有る。加えて家柄も良い。
「出雲、伯耆、因幡に後見。それも人の世、隠の世に。」
有名兎ですから、他にもイロイロ。うふふ。
「良いな。」
三大将、揃ってポロリ。
「まぁアレだ。海は任せろ。」
波子、鰭をパタパタ。
「陸は任せろ。」
猪突が鼻先を上げ、ニヤリ。
「空は、グフフ。」
探知の左目がキラリと光った。
公表してイナイだけで、他の社だって持ってマス。
大陸から持ち込まれるアレやコレを祓い、神の御元に並べて微笑む。そんな使わしめたちが、考えナシに動くワケ無いよネ。
中の西国、西端にある穴門社は響灘も管轄。使い和邇は穴門衆と呼ばれ、和邇の妖怪が三割、隠が七割。
同じく西端にある周坡社は镾灘も管轄。使い和邇は周坡衆と呼ばれ、和邇の二割が妖怪、八割が隠。
瀬戸内に面する安蓺の社憑き、守り鳥は鳥の隠や妖怪で構成される特殊部隊。
昼はワシタカ類、夜はフクロウ類が暗躍。最弱と言われるスズメ部隊は情報収集能力に長け、猛禽類が一目置く。
同じく瀬戸内に面する吉備の社憑き、紅備は動植物の隠・妖怪で構成された特殊部隊。赤松隊には陸、雉隊には空、牡蠣隊には海の生き物が所属。
磐現の社憑き、花咲は毒を持つ動植物で構成された特殊部隊。ある意味、やまと最強。
真中の七国に接する因幡には、守り影。白夜間神の使わしめ、雪花を慕う隠や妖怪で構成される特殊部隊。狐率高め。
その隣、伯耆にはハッチと愉快な仲間たち。