14-72 もう懲り懲り
闇が、闇が溢れ・・・・・・ない?
「どうなっている。」
プリプリ。
「何が起きた。」
イライラ。
「戦は、まだ始まらんのか。」
ムッキィ。
真中の七国を統べる王、七国王になった倭国王。口の上手さには定評アリ。けれど『なぁなぁ』で話を決め、いや決めつける無責任男。
棚ボタでも勝利は勝利! 好んで事を荒立てるコトは無い。
つまり戦争しません。もう懲り懲りデス。
「また持ち込まれたのか。」
六亀山に御坐す狭間の守神、甲山神が御頭を抱え為さる。
「はい。」
使わしめ瓜、涙目。
真中の七王は戦好き。倭国が勝利したが、他の六王は諦めてイナイ。
倭国王を殺して、いや倭国を滅ぼせば良いと考えている。
「おや、まぁ。」
鳰の海に御坐す狭間の守神、鳰海神が呆れ為さる。
「また持ち込まれました。」
使わしめ潜。特別仕様の浮巣に闇喰らいの品を入れ、祓う気マンマン。
初代、七国王は『長生き』したい。が、いつか死ぬ。死ぬが『殺される』のも『毒に苦しめられる』のもイヤ。
孫に囲まれ、心穏やかに。なんて事を考えている。
はい、その通り。紛争も闘争も戦争もコリゴリ。平和が一番! 社会の安寧を乱すトカ、不穏な言動をとるトカありえません。
叢闇の品とか闇喰らいの品とか、もう要らない。見つけ次第、ポイポイします。
「困ったモノだ。」
二柱そろってゲッソリ。
多紀、御嶽。満月でもナイのに、茶毛の兎がピョンピョン跳ねている。
両の前足には革の手袋が填められ、シュッシュと熱心に練習中。
近くで見守る烏天狗、苦笑。少し離れた場所で狸、気絶。
「そぉれソレそれ、トリャァァ。」
ポスぽすポスぽす、モフン。
「ふぅ、スッキリした。」
多紀連山にも連日、持ち込まれてマス。それを祓い清めるのは、荒事を担う御嶽社。
祓うのは多紀山のテーマソグを歌うのが大好き、使わしめ垨。荒事を好まぬ社憑き、喜知。兎に怯える社憑き、尾太。
「起きろ、祓うぞ。」
喜知が尾太に声を掛け、軽く揺さぶった。
「ヒィッ。」
尾太は老夫婦に可愛がられていた兎を襲い、目の前で食い殺して狸汁にされた老狸。兎に恨みを持つ狸の隠と融合し、妖怪になった。
垨に仕掛けるも完敗し、社憑きとして働く事になる。
「御嶽神、お願いします。」
垨が微笑み、首を垂れた。喜知、尾太も倣う。
御嶽神が清め為さった品は全て、大陸から持ち込まれた戦の具。集めたのはモチロン、御嶽の愉快な仲間たち。