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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
七国統一編
1280/1599

14-71 その時は


琅邪社ろうやのやしろ空霧うつおぎり空嶽うつおだけの社と。つまり『夜叉神よさのかみゆかりを結んだ』という話はアッと言う間に広まる。






「聞いた話だが、琅邪ろうや女王めのう王弟おおと。人から鬼神に御為り遊ばしたトカ。」


ピーチク。


「琅邪の大王おおきみなかば鬼らしい。」


パーチク。


「それはまことか?」


ピピピピピィィ。






妖怪の国守にも顔の筋が消え、角も牙も引っ込んだ鬼は居る。居るが多くは社付き。


真中まなか七国ななくにから闇が溢れ、中の東国ひがしくにを守るために集まった。それで顔見知りになり、社を通して結ぶ。






卑呼ひこって、生まれた時から。そんな姉と弟が守ろうとするかな。」


大石のクベが首をかしげる。


せがれに親を殺させて、それで『終わり』にしたんだろう。」


ミカが溜息をく。


「今の大王、前の大王の倅だっけ。」


「兄を見殺しにした父を憎んで、どうにもナラナイのを姉弟に救われたんだろうよ。」






大石も加津も耶万やまにイキナリ攻め込まれ、生き残りは売り飛ばされた。クベもミカも男だが、女は。


それを知っているので信じられない。



けれど二妖は考える。おのらは親にいつくしまれて育ち、引き離されて思った。国を滅ぼしに来た耶万がにくい、と。


攫われて奴婢ぬひにされ、酷い扱いを受けたが『いつか耶万を滅ぼす』『耶万王を殺す』と決めて生き抜く。


それが力となったのだ。






「琅邪はしづめ西国にしくに儺国なのくにの一つ。死んで鬼になった姉弟は生き神。出ても鎮の西国、会う事も無い。」


「そうだね。けどミカさん、明里あかりに来たら会うでしょう?」


「その時は会うさ。」






生き神は人の姿を借りて、人のときに現れた神。霊験れいげんあらたかな神。徳の高い人、教祖を高めていうが、卑呼姉弟はドウだろう。



『神として扱われていた』とか『願えば直ぐに叶えた』ワケでは無い。


神仏の加護も無く教祖でも無い。い行いをした? 怨みを持つ者に怨みで報いず、逆に恩恵を施した?



兄を見殺しにした王を憎み、殺そうとした儺升粒なしょぶに近づいたのは利用するため。姉弟は前、琅邪王ろうやのきみを毛嫌いしていた。だから儺升粒に協力し、前王を片付けたのだ。


そこに善意は無い。






「他に『仕掛けよう』とか『攻め込もう』とするなら捕らえて、そのまま吹出社ふきでのやしろに突き出す。けど神になったんだ。出雲より東には、出ても社を通すだろうよ。」


「そう、だよね。」






妖怪の国守は社付きだが、生まれ育った地を守るために戦う。敵が人でも隠でも、神であっても同じ事。


はじまりの隠神で在らせられる大蛇神おろちのかみおっしゃった。『人の世の事は人の世で、おにの世の事は隠の世で』と。






「動く前に通すよ。」


上司に伺いを立てる、これ常識。事が上手うまく運ぶよう、前もって関係者に話をつけておく。これ大事。


「ねぇ、ミカさん。その時は。」


「あぁ、頼む。」






闇とけ合う前に救われなければ、どんなに願っても元の姿には戻れない。角や牙を引っ込めなければ闇に引き摺られ、呑まれてしまう。


だから、そうなる前に。


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