14-69 見ない顔だな
空分社、いや空嶽に辿り着いた鬼は少数派。その大半は真中の七国に散らばり、血みどろの死闘を演ずる。
最後の一鬼になるまで。
「父しゃん。」
幼子の目から光が消えた。
「ガリッガリじゃねぇか。」
小さな骸に齧り付き、骨までしゃぶる。
アッチでもコッチでもバタバタと死に、鬼化した隠の記憶から闇が発生。ドッと倭国に押し寄せた。
狙うは七国統一を果たした? 倭国王の魂一つ。
「一人は嫌だよぅ。」
「寒いよぅ。」
「寂しいよぅ。」
嬰児や幼子を飢えさせぬよう、親や兄姉は食べ物を与える。己が弱っても、死んでしまうまで。
残された子は生きられず、動けなくなって後を追う。
根の国や空嶽へ行ければ良いが、数多の神が御隠れ遊ばした真中の七国では難しい。
フラフラと彷徨い、闇に吞まれてしまうから。
「あぁ、美味い。」
勢いよく噴き出す闇、漂う闇を吸収して巨大化。
「もっと。もっと。」
ドクン、ドクンと脈打つソレは怨霊。
真中の七国に蔓延っていた闇は、光の雨になって大地を浄化。清らになった。
と思ったのに闇が噴き出し、溢れて広がり漆黒の闇に支配される。
「手始めに、そうだな。倭国王。ウゲッ。」
倭国王に取り憑こうとするも弾かれ、バンと叩きつけられた。
「エッ! 他のに、だと。」
既に呪われている事に驚愕。
「諦めな。ソイツの他も同じ、呪われてらぁ。」
お仲間が居た。
「ケッ、何だよ。」
出遅れたか。
「そうそう、聞いたか。海を渡って来た品の中に、持ち主を王にする闇が隠されてるって話。」
ナヌッ。
「体に目がイッパイついてる馬、いや牛か。ソレが捕まえたヤツが『テンゴク』、だったかな。」
「そうそう、テンゴクに連れて行くって。」
大陸から齎された呪物、吸鬼は白澤により天獄へ。
どんなに闇を深めても取り込めない。天獄へ乗り込む術も無い。
・・・・・・諦めるか。
「ソレってさ、吸鬼って闇だろう?」
物では無く、闇なのか。
「詳しく聞かせてくれ。」
吸鬼の話を聞き興味を示す。
「見ない顔だな。」
テンゴクに居るキュウキに会いに行く。ゴク、行く。
「心垢だ。」
良いコトを聞いた。
吸鬼ってのは大陸から持ち込まれた鉦、に憑いていた獣。何となく嫌な感じがしたので対国で別れ、西を目指す。で捕まったのか。
気に入った。
「いつの日か取り込み、闇を統べる王になる。」
心垢が宣言したのをコッソリ聞いていた烏天狗が、心を静めてソッと飛び立った。
「早く、早く御嶽神に御伝えしなければ!」
御嶽の社憑き、喜知が血相を変えて御嶽神に報告。
御嶽神から多紀神、多紀神から和山社へ報告された。