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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
七国統一編
1277/1592

14-68 やっと戦が終わったのに


足りない。足りない、足りない、足りない!


何で。飲んでも飲んでも、食べても食べても満たされないんだ。



爪が伸びた。頭が痛くて歯も、獣のように伸びている。


死んだ、よな。殺されたよな、あの時。






「みぃつけたっ。鬼さんコチラ、やしろ御出おいで♪」


門音もとが楽しそうに、体を左右に揺らす。


「えっ。」


どんなに踏ん張ってもあらがえず、ドスドスと歩を進める。






ココは人のとき空嶽うつおだけ


真中まなか七国ななくに倭国しずのくにそびえる御山に建つ空分社うつおのわけやしろおにとき空霧うつおぎりに繋がっている。



真中の七国、倭国の北東。空山脈の中央にある鬼の住処すみか


治めの隠は夜叉神よさのかみ。隠の世から御出で遊ばさぬ、やまと最古の鬼神で在らせられる。






「増えたな。」


遠い目を為さる夜叉神。


「はい。」


項垂うなだれる使わしめ。






新入りの霊力を鑑定し、その能力や本質を精査。不合格者は浄化の後、粛粛と殺処分。するのだが只今ただいま、浄化一週間待ちデス。



鬼は山の精霊、荒ぶる神を代表する霊怪れいかい。醜悪な形相と怪力の持ち主とされるが、その多くが性別を問わず妖艶。


苦悩する姿まで色っぽい。






「あ、あの。」


ハァハァハァ。


「鼻息が荒いゾ。」


白牙はがに指摘され、ドキリ。






中国では亡霊をとし、半人半神の霊的存在とされる。



日本における鬼は黄泉醜女よもつしこめに始まり、時代や思想の流れと共に変化。


死の穢れの擬人化されたモノとか、人を喰らう異形の怪物とされているが、全ての鬼が人を食すワケでは無い。



そもそも訪問して来た伊弉諾尊いざなぎのみことが『言い付け』を守り、待っていたら『あんなコト』にはナラナカッタ。


それは扨置さておき死後、鬼化する隠が多過ぎる。






「人の世で何が起きた。」


引き離してから問う。


「倭国が勝ちましたが、またきみが変わるでしょう。」






真中の七国は一つになった。



大戦おおいくさを勝ち抜いたのは倭国だが、守りに徹したダケで国力は弱い。


口が上手うま倭国王しずのくにのきみは食料自給率を上げようと、おみを遣ってイロイロしている。けれど難しかろう。


種籾たねもみが無いのだから。






「やっといくさが終わったのに、飢えてバタバタ死ぬんだろうな。」


処刑待ちの鬼が呟く。


「土がさ、違うんだよ。」


空霧の土に触れ、一掴み。


「何が出来るだろう。」


鬼になっても、思う事はある。


「残しちまった子、生きてるかな。」






ゆかりの者は皆、死んだ。


おのが死ねば頼る者が居なくなる。どうにか集めた食べ物を与え、凍えないよう抱きしめた。他に出来る事が無かったから。



生きてほしい。けれど・・・・・・難しかろう。


それでも何とか。そう願わずにイラレナイ。






「ナンデ殺し合うんだろうな。」


誰かがポツリと呟いた。


「それが人ってヤツなんだろう。」


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