14-63 煽動開始
早稲は毒使い、風見は戦狂い。早稲は村で風見は国。だから風見が早稲と、という話ではアリマセン。
早稲は村だが豊かで強く、国にする気が無いダケ。その気になれば国に出来る。だから他に頼れない人が逃げ込み、助けを求めるのだ。
死ぬ気で。
「風見と早稲を離せれば良いが、早稲は中で揉めている。そのウチ崩れるだろう。」
倭国王、爆弾発言。
「あぁ、聞いた事がある。『女の臣が狩頭を従え、争う長と大臣の間に入った』と。」
飛国王が乗っかった。
え? 何それ。初耳なんですケド。
長と大臣は兄弟で、その妹が臣。臣と狩頭は夫婦デス。
兄弟喧嘩を止めに入った妹の傍に、義弟が居たか通りかかったか。
揉めたキッカケも釣った魚の大きさトカ、逃した魚の大きさトカ、傍から見たらドウでも良い事でしょうよ。
「民も臣に付いたトカ。」
保国王よ。悪いがソレ、ズッと前からデス。
玉置と三鶴にボロッボロにされた早稲を見捨てず、残った『早稲の他所の』人はカツだけ。そのカツと契り、早稲を立て直したのがヒトとヌエの妹セイ。
カツとセイの倅ユユは次期、狩頭最有力候補。その気になれば長の座も狙える。
因みに早稲の社の司は弱いケド、人の長としてイロイロ努めてマス。
そうそう。早稲は浅木や谷西の他にも中主、菜生、中多とも交流アリ。
許し無く川を北上する輩を一網打尽にし、自供させてから釈放。
はい、殺しません。コッテリたっぷりキリキリ締め上げた後、犢鼻褌一丁で放ちます。
壊れ物は修繕、残りは再利用。新しい武器や武具は一定数、補修してから倉に納める。その際、古いモノはガンガン鋳潰すので無駄が無い。
結果、早稲の品は丈夫で長持ちすると大好評。
「真中の七国を一つにするのが早いか、風見と早稲が離れるのが早いか。」
駒国王、溜息交じりにポツリ。
ってイヤイヤ、それオカシイ。
風見と早稲は同盟関係にあり、解消すれば厄介な事になる。面倒ドコロの騒ぎでは無い。
何れも常にノラリクラリとした返答しかシナイので、陰で『骨ナシ』と言われてマス。
風見は暴れ川の下流にある軍事国家。霧雲山の統べる地で暮らす忍びには及ばないが、ソレナリに強い忍びを有している。
お察しの通り、真中の七国にも潜ってマス。
「風見より早稲だ。浅木、実山、良那とも繋がっている。」
瀬国王、ズバッ。六王ザワッ。
「それに加津、近海とも結んだトカ。」
笠国王、ニヤリ。六王ザワザワッ。
「耶万からは離れたが、耶万社とは今も。」
剛国王、クワッ。六王ポカァン。
盛り上がっているトコロ悪いケドそれ、真ですか。
誰から何時、何処で聞いたの。裏取りした?
『ナニナニらしいヨ』とか『ここダケの話』ってのは、眉に唾をつけて騙されないように用心しなきゃイケナイよ。
「このまま争っていたら耶万、いや早稲や風見に全て奪われるだろう。」
倭国王、煽動開始。