14-62 テストには出ないケド
中の西国は落ち着き、鎮の西国も近いウチに。残るは真中の七国。
人の世の事だ、夜叉神が御力を揮われる事は無い。けれど人の世には空分社が在る。
鬼の受け入れに忙しく、手足となって動ける鬼が足りん。何とかせねば門音が倒れてしまう。
だから鎮の西国に、力を持つ鬼が生まれたと知り喜んだ。
卑呼姉弟を引き込む事には失敗したが、重要な役割を担わせる事には成功。闇喰らいの品が持ち込まれても隠の世は守られる。
のだが、あの目。
「何れにも付かず、偏らぬと。」
ソレならソレで良い。
「そろそろ戻るか。」
ギリギリで作付けし、越冬に成功。したのは良いが春になり、キナ臭い情報が飛び交う。
真中の七国で大王になると皆、人が変わったように戦好きになるのだ。呪い、としか考えられない。
「豊かで平たい地は少ない。だから仕掛け、攻め込む。中の西国、南国、四つ国、中の東国も難しい。鎮の西国、鎮の東国は遠く、戦う前に弱ってしまう。」
うんうん。
「七国が、いや七王が一つになれば勝てる。」
七王がザワつく。
七国を統べる王を決めようと、倭国に新王が集まった。
真中に聳える多紀山ではナク倭国が選ばれたのは、倭国王が『言い出しっぺ』で鳰の海が近いから。
真中の七王、揃って若い。王の時は戦嫌いだったのに、大王になると戦好きになる。
笠国、駒国、剛国、倭国、瀬国、飛国、保国。何れも山に囲まれ獣が多い。
夏が来なかったり雨が降らないと困るが、奪い合わなくても生きられるハズなのに。
「昔、昔の大王は耶万に仕掛けて勝った。それから直ぐに攻め込まれ、アチコチに毒を散蒔かれて負けた。」
グウの音も出ない。
「耶万が風見、早稲と結ぶ前に動いたら。」
ザワッ。
「勢いを付けた耶万は松田を奪い、松裏を滅ぼして『松毒』を奪った。ソレを持って風見と結んだのだ。」
松田は犲の里に兵を差し向けた事で滅んだ。松毒を土産に風見と同盟を結んだから、では無い。
里の者は神から力を授かり、その暮らしは山奥でも豊か。力は殺す事で奪え、大王の中の大王になれる。なんて噂を信じ、ずっと探していたのだ。
社の司は犲を従え、生きた獣と視聴覚を共有する『獣の力』。祝は触れたものを破滅させる『滅びの力』を授かる。
里では社の司を『見張り』、祝を『守り』と呼び、その力は死後、里の誰かが生む子に引き継がれる。
社の司や祝を殺しても、生まれ持った力は奪えません。
「耶万は『耶万の夢』と『松毒』を早稲に渡し、ほんの少しでも多くの命を奪う毒を作らせた。それが新しい耶万の夢。」
はい、大嘘です。
松裏は松林の奥、松田の東にあった『松毒』製造拠点。松田王と倅に毒を盛った疑いを掛けられ消滅。
松田は松裏を滅ぼせば全て奪えると考えた。
松裏王は松毒を飲まされ死亡したが、捕らえられる前に松毒の全てを処分するよう王命を出した。結果、松毒は国と共に消滅。
それを知った松田王は地団太を踏む。
「耶万は社に乗っ取られ風見、早稲との結びを解く。」
はい、違います。
風見と早稲は耶万に見切りをつけ、離れたダケ。耶万が振ったのではナク振られました。
テストには出ないケド、ココ重要。