14-60 見える、見えるぞ
アチコチ痛ぇ。
悪事を働く前の呪物を破壊、いや粉砕するか? 洗浄液か浄化液かを注入後、攪拌と同時に投入されたのは細かく、細かぁく切り刻まれた分身体。
その後、濾過され脱水。
「ドウなっている。」
鉄だぞ鉄。
「ハッ! あの液体は岩漿か。」
違います。
「絶東の小国に、そのような高等技術が。」
アリマセン。
「フッ、アハハハハ。奪ってやる、全て。全て奪ってやるゾ。」
呪物は量産品。今後も大量流入し、各地で内戦勃発。大戦となれば容易に奪取可能。闇には困らない。
「見える、見えるぞ。蛮夷が降伏し、従属する姿が。」
呪鉄の思惑通りになり、ません。
鎮の西国には瓢、琅邪も在ります。瓢は鎮の西国と中の西国、琅邪は儺国を監視。
異物を発見次第、全力で排除するでしょう。
「また持ち込まれたか。」
卑呼女が呟く。
「ミチ姉さん。持ち込まれたのは闇喰らい、大陸の『呪い』ですか。」
卑呼男が静かに問うた。
鬼化した卑呼姉弟は新たに鑑定、及び解析能力を獲得。
女王は水と風を駆使して索敵能力を。王弟は重力操作能力に加え、瞬間移動を可能にする。
因みに半鬼化した儺升粒は思考操作能力を得たが、他は人と同じなので社の司を兼任。
卑呼女から『人として死ねば鬼になる』と言われ、ホッとした。
「イオ。」
険しかった表情がスッと和らぐ。
卑呼男は姉を『ミチ姉さん』、卑呼女は弟を『イオ』と呼ぶ。親ナシになった時、互いに名付けた。
ミチは田畑に伸びる多くの小道、阡から。イオは幼児の時、「五百の毒を覚えて薬を作る」と断言した事から命名。
「対国に鉦が一つ。」
「あぁ、アレですか。」
鉦は小形の、叩いて鳴らす楽器。敲き鉦、伏せ鉦、鉦鼓とも。
銅鐸は内部に舌(舌)を吊るし、揺り動かして音を出す。鉦は打ち鳴らすモノで、クヮンくゎんクヮンと良く響く。
2009年、世界無形遺産に登録された雅楽でも大活躍。密教では仏具として用いられてマス。
「鳴らす度に闇を集め、増やすオソロシイ品だ。」
「うわぁ。」
イオが顔を顰める。
「鎮の西国、北の地は大陸から近い。近ければイロイロ持ち込まれ、アチコチに。」
対国に流入した品は、その禍禍しさから社に持ち込まれた。結果、鋳潰されて地金となる。
呪鉄、再び。
とナラナカッタのは隠の世、竪羅山に御坐す蝙蝠神が御力を揮われたから。
トントン。
「女王、儺升粒です。宜しいでしょうか。」
姉弟が見合い、ミチが頷く。
「入れ。」
「ハッ。」
イオに許され、笑顔で入室。