14-59 あはは、うふふ
千砂の妖怪の国守、モトは守りながら戦えない。
けれど闇の両縁を鋸歯に変え、対象の中心を狙う。ゴムのように伸ばして刺したり、戻す時に大きくして引き抜く事も可能。
「グハッ。」
細切れになった呪鉄を、更に細かく刻むのは妖怪の祝、腰麻のユキ。揮っているのは闇を刃に変え、鞭のように自在に操る闇の力。
「ばけ・・・・・・もの。」
挽肉になっても喋れるナンテ、大したモノだ。
呪鉄が己を切り取り、バラバラと散らして蒔く。ソレを集められるのはイイとミイだと、先見の力が有る千砂のヨヨが言った。
『みんなで力を合わせて戦わないと、真中の七国から闇が溢れる。やまとを丸ごと呑み込んでしまう』とも。
叢闇鉄は耶万の神倉に納められた叢闇剣、蛇谷の神倉に納められた叢闇鏡、雫湖の神倉に納められた叢闇珠と同等。
取扱注意ドコロでは無い危険物。細心の注意を払い、事に当たらねば。
「確かにバケモノだけど、傷つくわね。」
ユキが呟く。
「あら? ユラ。そんなに強く突けば、袋が割れてしまうわ。」
「クベの闇だモン、破けないヨ。」
と言いながら尾でペシペシ。
妖怪に殺された魂が集まり妖怪化したユラは、蛇の姿をしているが光の中では生きられない。だから地に潜り、物影から出入りする。
空嶽は鬱蒼としているので地表に出られるが、地に潜っている方が強い力を出せる。だからハラハラどきどき。
「ユラさま。そろそろ、宜しいでしょうか。」
良那の妖怪の国守、オトがニコリ。
「分かりました。」
テイッ。
オトは耳とカンが良く、闇をハリネズミのように立て、飛ばして戦う事が出来る。川に落ちて流れた分身体を残らず仕留めた。
ソレを回収するのは嗚山の妖怪の国守、風を操る力を持つクウ。
「ゴヴォウヴォ。」 ウソダロォ。
蛇のペシペシ攻撃はミンチになった呪鉄を苦しめた。やっと止んだと思ったら、ドバドバと追加注入。何がって? 加津の清め水です。
「ヴゴゴウヴォヴォ。」 シンジランネェ。
ドロッドロになっても諦めない。原形を留めない分身体が投入され、更に攪拌されても諦めない。諦められない。
「・・・・・・ありがとう。」
悪取神が戸惑い為さったのは、受け取ったソレがチョッピリ温かかったから。
特製袋に入れられたブツは、茶巾絞り状態の呪物。叢闇鉄だったモノ。出来立てホヤホヤなので柔らかいケド、冷めれば固まりマス。
多分。
作戦に参加したのは会岐の国守フタ、その子ミイ。大石の国守クベ、その子ムゥ。嗚山の国守クウ。加津の国守ミカ、その子イイ。
腰麻の祝ユキ、闇蛇ユラ。千砂の国守モト、その子ヨヨ。良那の国守オト。揃ってニッコニコ。
笑って誤魔化している? あはは、うふふ。
その後、呪鉄はクベの闇に包まれたまま霧雲山の麓、石室の奥に隔離されました。悪取神と大貝神の使わしめ、土の力で雁字搦めにされてネ。