14-57 寝言は寝て言え
神倉建設地がナカナカ決まらず霧雲山の麓、石室に納められる事に。ナッタのは良いが、こう幾度も持ち込まれては困る。
「呪物、叢闇鉄。長い! 呪鉄。白状しニャ。大陸から持ち込まれた叢闇の品、ドコに幾つ有る。」
・・・・・・。
「仕方ニャイねぇ。」
と言いながら出したのは、あの巻物。
「お待ちください。分かりません、知りません。本当です! 信じてください。」
爪を出し、一瞥を投げるニャンコ。
「引っ掻か、いや切り刻まないで。お願いします。」
呪鉄、ガクがくブルぶる。
琅邪女王、卑呼女は水と風。王弟、卑呼男は重力操作能力を得た。
鬼化した姉弟は直ぐに馴染んだが、半鬼化した琅邪大王は違う。
変わった爪と目の色が戻り、動けるようになるまで三日三晩、苦しみ続けた。その結果、思考操作能力を得る。
瓢の長、滑が言うのだ。間違い無い。
やまと最古の鬼神、夜叉神は隠の世、空霧から御出に為らない。だから真中の七国、空嶽に空分社が建てられた。
分社の守鬼は闇の化身、門音は大の戦嫌い。叢闇の品が持ち込まれる前に閉ざすハズ。
鉄が空嶽の縦穴に隠されたのは偶然か?
死んだ倭国の大臣はナゼ、遠く離れた空嶽を選んだ。あの山は近づく者を選ぶ。知らずに、いやソレは無い。
となると闇に中てられたか、操られたのだろう。
「琅邪を選んだのは命令か。」
御猫サマに問われ、ビクッ。
「いいえ。儺国王に憑くには、取り憑く器が要ります。ですから儺国で最も大きな小国を目指し、王を。」
シャキン、シュッ。シャキン、シュッと爪を出し入れ。
「琅邪大王かラ儺国王ニ贈らセよウと考え、近づイたのデすが。」
声をコロコロ裏返しながら、分かり易く怯える呪鉄。
「ニャンだい、続けな。」
「ヒャイ。アレはバケモノです。本気で闇を展開したのに、ちっとも全く入らず焦りましたぁ。」
ニュッと生えた手足を器用に動かし、土下座。
卑呼姉弟は人間だったが、言語に絶する苦労を重ねる。
常に笑顔を貼り付けているが互いの他は信用せず、利用できるモノは何でも利用。強い闇耐性が現れたのは偶然ではナク必然。
儺升粒は兄を見殺しにした父を憎み、殺そうとしたのを卑呼姉弟に諭され心酔。
『いつか捨てられるのでは』と考えた事もあるが、それでも共に生きると決意。闇に耐性が無かったが、痛みに対する耐性は高かった。
「あの姉弟、危険です。」
キリッ。
琅邪王、女王、王弟は恐らく鎮の西国から出ない。結ぶなら四つ国か中の西国。儺国と決別する事は有っても、覇権を争う事は無いだろう。
鎮の西国は瓢、真中の七国では空分社が目を光らせている。
中の東国に入れば松田に流され、松裏で融かされ消滅。その辺りは隠の世、郡山。隠の祝ミツから説明を受けるハズ。
「流さま、共に戦いましょうぞ。」
「寝言は寝て言え。」
「しっ、失礼しましたぁぁ。」
ズササササと逃げた呪鉄、アッサリ御用。白澤に上から押さえつけ、いや踏まれて埋まった。
「ドコへ行く。」
「もう嫌。やまとコワイよ、帰りたい。」