14-53 候補地が無い
倭国王の元には、弱いが闇の塊が有った。だから遠ざけ、移させたが何だ、あの力は。
「まぁ良い。」
かなり奪われたが、まだタップリ残っている。祝がイナイこの地でなら、より強い力を得られるハズ。気長に待つさ。
「クックック。アレほど滑稽な生物は無い。」
醜悪で愚鈍な存在、それが人類。
叢闇鉄。そう呼ばれるブツは遠く、大陸から齎された呪物。闇を纏う時、『海の向こうに王道楽土を』と言っていたが大嘘。
腹の中では対国を足掛かりに儺国を奪い、鎮の西国を支配下に置く。
それから中の西国、真中の七国と侵略の触手を伸ばし、やまと全土を。そう考えていた。
「にしても、あの姉弟。」
対国から儺国、琅邪に入って直ぐだ。巫の姿をしていたが、あの女。それに、あの男。闇を抱えていたゾ。
「はぁ。過ぎた事だ、忘れよう。」
呪物は大陸から対国、儺国と渡り、倭国の兵が海路で持ち帰った品。略取した闇を濃縮させるため儺国、琅邪に入るも卑呼姉弟、琅邪大王に妨害される。
海中で浄化されながら気合と根性で上陸し、近くにいた人間に拾わせる事に成功。
保国の水手から兵の手に渡り、そのまま保国王。それから飛国王に奪わせ、倭国の大臣に奪わせた。
大王から離し、隠させたのは嫌な予感がしたから。
「この山、妙だな。」
麓なのに人が来ない、近づかない。どうなっている。
「方方から闇が噴き出すのに、深いのに何も感じない。」
空嶽の縦穴で呟く。
矢箆木社から緊急報告を受け、和山社が動いた。
叢闇の品は大蛇神でも、全ての才を持つ化け王にも破壊できない代物。だから急ぎ議り、中つ国と根の国の境に神倉を建てる事になった。
のだが・・・・・・。
「困った。」
候補地が無い。
「鎮の西国は戦、戦で闇が濃い。」
ずっと昔からネ。
「中の西国は落ち着いたが。」
戦はナイけど、小競り合いなら今も。
「真中の七国は話にならぬ。」
本当、懲りないね。
この度、倭国に持ち込まれた鉄は小さいが恐ろしく深く、濃い闇を纏っている。耶万の洞より大きく、蛇谷の洞より強くなければ納められない。
「鼠神。」
「はい、大蛇神。私が見つけた洞は閉じたり崩れたりで、神倉も社も建てられません。」
中の東国、大貝山の地の果て。死の森に在るには在る。けれど空白地帯で、明里領を通らなければ入れない。
明里は人の世に在る隠の国。悪取神が御坐すが大国で、合いの子も多く暮らしている。
明里は千砂と加津が後見になり、腰麻と結んだ。千砂と加津には妖怪の国守、腰麻には妖怪の祝が居るが頼れない。
シッカリしているが、万が一というコトも。
「霧雲山、麓の石室の奥に建てるか。」
「エッ、と。あの洞は確か。」
岩窟の奥に洞が在るが、細い蛇にしか出入り出来ない。