14-49 前向き
真中の七王、死亡に伴い新王誕生。したのは良いが、大王就任と同時に闇が蠢く。
「ワシが大王だ。中の東国から手を引き、真中の七国を一つにする。」
笠国王、駒国王、剛国王、倭国王、瀬国王、飛国王、保国王が堂堂、中の東国からの撤退を宣言。
兵に植え付けられた闇の種が、小さな棘のように刺さっているので問題ナシ。
「・・・・・・お、おぉ。」
エッ、マジですか。と思いながら、とりあえず歓声を上げる臣たち。モチロン刺さってマスよ、闇の種。
七王は考えた。中の東国に仕掛けても、ドッと攻め込んでも勝てない。中の西国、鎮の西国も似たようなモノ。なら外ではナク内を見よう。
昔、昔の大王が望んだ事だ。きっと上手く運ぶ。
「先ず荒れた国を整え、豊かにする。真中の七国を一つにする、大きな力になるだろう。」
あらビックリ! 戦好きがマトモな事を言っている。
「ヲォォッ。」
生き残った民、狂喜乱舞。
真中の七国を統べるには、他の六王を従える『何か』が要る。戦の具、毒? いや違う、食べ物だ。
国を豊かにすればイロイロ入ってくるし、強い兵だってボコボコ生まれるだろう。ソレを鍛えて送り込めば、きっと勝てるゾ、奪えるゾ。
「荒れた田、畑も整えよ。畑に蕎麦、芋を植えるのだ。」
ザワッ。
芋は主食。蕎麦は収穫までの期間が短く、荒地でも良く育つ。米や粟、稗、黍、麦も食べてしまった。頼るなら中の西国。
中の東国、南国も冷たい。斑毛山、畏れ山、津久間との境もガッチリ守られている。
アレは人では無い、バケモノだ。コチラには人しか居ないのだから、どう前向きに考えても勝てない。奪えない。
「秋になれば栗や橡、ドングリにサルナシなど、美味いモノが多く採れる。」
ザワザワザワ。
「飢えて死ぬ前に蕎麦、芋を多く作れ。」
「オォォッ。」
やる気、出ましたね。
笠国、前狭神。駒国、甲賀神。剛国、無患子神。倭国、寧楽神。瀬国、五色神。飛国、伊摩神。保国、壅坧神。
七柱、ホッ。
「やっと、やっと穏やかになった。」
御考え遊ばす事は同じ。
「多紀で議ろう。」
ウンウン。
「多紀社へ使いを。」
数多の神が御隠れ遊ばしたのは、真中の七国だけでは無い。鎮の西国、中の西国も同じだが荒れ地を整え、立て直す事を選んだ。
真中の七国は奪う事しか考えず、子が生まれても育たない。食べ物が足りず病になり、飢えて凍えて死んでしまう。なのに戦、戦。
「呪われているのか、近いウチに闇に染まる。その前に調べ上げ、食い止めねば。」
光の雨がドドドとタップリ降ったのに、もう闇が漂い始めた。『呪い』としか考えられない。
大陸から齎された禍、叢闇の品か?




