14-48 駒鳥だけど
七つの国から爆音が響き、突き上げるように揺らす。それから恐ろしいホド強い光の雨が降り、刺すように地を打った。
「コレはまた。」
多紀神が御目をパチクリ為さる。
光の雨が地を打つ度、ヴォヴォヴォンと漆黒の砲弾が打ち上がる。バラバラと殺傷能力の高い破片が散蒔かれ、またヴォヴォヴォヴォン。
「ギョメンください。」
倭国より寧楽神の使わしめ、カララが飛んできた。フラフラである。
「どう為さいました?」
駒鳥だけど千鳥足。
「ワシャ、早稲から知らされたマギャタマ。勾玉が。」
早稲神の使わしめ、実は妖術に秀でた元、野狐である。早稲社の平和と安全を守るためなら、譬え火の中、闇の中。
倭国には風見から贈られた勾玉があり、風見から倭国に流れたソレは闇喰らいの品。今も禍を齎し、真中の七国で人の骸から鬼がボコボコ生まれている。
なんてコトまでサラリと報告。
「かじゃみ、風見の勾玉が。勾玉がぁ。」
ポスンと尻を付き、両の羽で頭を抱えた。
「カララさま、お気を確かに。」
「モモしゃま。」
こりゃ重症だ。羽の間から見える目が、分かり易く揺れている。
倭国王が持っていた闇喰らいの品が、生きて戻された兵に植えられた闇の種に反応。
恐ろしい勢いで急成長し、禍禍しい実がヴォンと弾けた。結果、倭国の強硬派を一掃。
矢のように降る雨に貫かれ、多くの人が動かなくなった。
死んではイナイ、生きている。けれど虫の息。悪いのを全滅させたのは良いが、このままでは冬を越せない。
「ウム。」
『捨て置け』なんて、言えナイよね。
ナゼだか分からない。けれど真中の七国では大王が死んでも、その倅が死んでも次の大王が直ぐに決まる。
決まるのは良いが、大王になると戦好きに変わるのだ。
やっと落ち着いたのに、またオカシクなった。
真中の七国が一つに纏まるのは良いが、倭国が鎮の西国や中の西国と渡り合うにはイロイロと足りない。
それを補うため、戦を仕掛けたり攻め込むのだろう。
「次のも同じか。」
「はい。」
恐らく。
倭国で浄化された闇喰らいの品は、もう禍を齎せない。他の国に有った悪いモノも浄化済。
何れ新しい大王が選ばれるが、それは少し先の話。
「どっかんドッカンと弾けたのだから、忘れたくても忘れられまい。」
その魂に深く、深ぁく刻みつけられたのだから。
「だと良いのですが。」
ずっと、ずぅっと同じ事が繰り返されてマス。だから、信じたくても信じられません。
ギュゥゥ、ヴォォン! ヴァチヴァチヴァチィ。ピッカァ。
「オヤオヤ、まだ残っていたのか。」
真中の七国は闇塗れ。次次に実り、弾けマス。