14-46 絶痛絶苦
光江の港は広い。
浜に朝日が当たり、キラキラ輝いた。真中の七国から送り込まれた男たちが、フラフラと立ち上がった瞬間。
「ヴッ。」
胸にトストスと、闇の種が植え付けられる。
「ギャッ。」
膝をつき苦しむ兵の中から七人、闇に落ちた。
高台から耶万の社の司、アコ。禰宜ザク、祝人アサが冷たい目で見下ろし、溜息を吐く。
兵たちは闇の種を植えられて直ぐ、ポポンと葉が開き花を咲かせる。柱頭に顔が現れると叫び、罵り合う。花糸を伸ばして絡み合い、また叫ぶ。
「早過ぎるだろう。」
アコがポツリ。
「もう実を付けた。」
ザクが呆れる。
「そろそろ、かな。」
アサが開いた闇に飛び込み、衝撃に備えた。
ヴォォン!
アコ、ザク、アサ。照とマノ。耶万から派遣されている臣や民も無事。
けれど言い付けを破った光江の民は、耳がキィンとして聞こえなくなった。
ヴォヴォヴォヴォ、ヴォォン!
次次に弾ける闇の実は禍禍しく、大きい。そんなモノが数万、同時に打ち上げられたらドウなるか。
考えるマデも無い。大災害だ。
大地がドドドと揺れ、家が崩れてペッシャンコ。地面に深く、長い裂け目が出来た。
ザァァァッ。
光江を襲った集中豪雨は、発光しながら傷ついた大地を修復。
闇が噴き出していた悦はモチロン、森に潜んで居たゴロツキまでシュワッと融かしてしまった。
「アァァァッ。」
生き残った七人、絶叫。
アコに闇の種を植えられ、各国一人を残して全滅。ソレを特等席で見せられたのだ。発狂してもオカシクない。
腰を抜かしたままジュワッと漏らし、頭を抱えたり首をブンブン横に振ったり、何かをブツブツ言っている。
「なぁアコ。アレ、急いで戻さなきゃ。」
「ザクさんの言う通り。舟だと戻る前に、ボンボン弾けますよ。」
「そうだね。アサ、頼めるかい。」
「はい。」
「イヤイヤ待て待て。どんなに強い祝の力が有っても、人の力では難しい。私も行こう。」
「ありがとうございます、マノさま。」
「ザク、アコを頼む。」
「はい、照さま。」
照がアコの肩からシュルリを下り、アサの腕に体を巻きつける。左肩に照、右肩にマノが頭を乗せた。
アサの体が淡い光に包まれ、フワリと浮かぶ。と同時に醜態を曝す七人の兵が姿を消し、真中の七国へ瞬間移動。
ポン、ポポンと放り出されてグニャリ。
「こ、こは。」
国に戻された兵は皆、泣きながら転がるように帰宅。帰る家の無い者は里や村、国の長に助けを求めた。
けれど酷く取り乱し、全く話が出来ない。