14-45 朝日
己は死んだ耶万王に生き写し。その事を気に病み、嫌っていた。けれど照は母に似ていると、そう言ってくれる。
母から受け継いだのは闇の力だけでは無い。その事が嬉しくて堪らない。
「ありがとう。」
照に頬を寄せ、アコが呟く。
「うふふ。」
アコは思う。耶万に組み込まれ、飢えたり凍える事が無くなったのに変わらない国を潰そうと。けれど、その度にドキリとするのだ。
己の顔も考えも、あの王と同じではないか!
耶万に滅ぼされた国は多い。蛇谷も、その一つ。だから残った国はボロボロでも、一人でも生き残りが居るのなら残したい。支えたいと。
会岐、伊東、大石、加津、腰麻、千砂は元に戻った。久本は、まぁ何とか。なのに悦、采、大野、光江、安は今も酷い。
他から奪う事しか考えず、戦を仕掛けて攻めようとする。
耶万に破れ、消えて無くなった国。阿倍、綾部、井上、今井、嶋田、冨井、安井があった地は荒れ果て、森になったり林になったり。
「アコ。闇の力は強いケド、全てを救えない。だからね、出来る事をしよう。」
「そうだね。」
闇を抱えても、歪んでしまっても生きられる。『生き難い』と思う事は有るけれど、それでも死ぬまで生きられるんだ。
母さん。生まれた子は皆、清らだよ。この力、誰かに受け継がれるのかな。その時、笑ってくれると嬉しい。
照が居るモン、使い熟せるようになるよね。
耶万の子も、耶万に組み込まれた国の子も皆、穏やかに和やかに暮らしてほしい。『幸せだな』って思ってほしいんだ。
だから諦めず、これからも力を尽くすよ。
「アコ、もう休もう。」
「ありがとう、ザク。」
夜が明けたら一人づつ選び、除けてから闇の種を植える。
実が弾けるまで見せたら舟に放り込み、沖に流せば和邇が運ぶだろう。
耶万に仕掛けたり攻め込む国は、加津か光江の港を奪おうする。けれど会岐、大石、加津、千砂には妖怪の国守、腰麻には妖怪の祝が居て強い。
他とも社を通して結んだり、付合いが有るからね。
「おはよう! 朝だよ。」
耶万神の使わしめ、マノが元気よく現れた。
「まだ暗い。」
「照さま、おはようございます。」
ニッコリ。
「浜に光が射すまで、まだ少しある。」
「そうですネ。」
にこにこ、シュルリ。
浜に朝日が射す少し前、アコが目を覚ましザクを起こした。身支度をしてから顔を洗いに行き、朝餉を食べて、お片付け。
「おはようございます。」
耶万からアサが到着。
「おはよう、アサ。朝餉は食べた?」
「はい、アコさま。」
「じゃぁ、行こうか。」
ザクが微笑み、外に出た。
兵頭は『耶万を落とせる』と信じて疑わないが、他の兵は違う。ヤケに美しい朝日を見つめ、涙を流す。