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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
七国統一編
1253/1591

14-44 感涙


慌てて加津かづを離れた舟が、光江の浜に着いたのは草木も眠るうし三つ時。


今の午前二時から二時半ごろ。




「ココは。」


心行くまでパックンした和邇わにさんズ、甲の指示に従い打ち上げました。


「生きている、のか。」


はい、生きてマス。




フラフラと舟を降り、おかに上がったつわものたち。枯れ枝を集めながら進み、火を起こす。


飲まず食わずでココまで来たからか、バタンと倒れて眠り込む。




「ユイが見た通り、泥のように眠って居るよ。」


耶万社やまのやしろの祝、ユイには先読の力。禰宜ねぎザクには心の声を聞き、伝える力がある。


「ありがとう、ザク。日が昇るまで休もう。」


社の司、アコが微笑む。


「そうだな、戻るか。」




アコとザクが戻ったのは社の離れではなく、光江に建てられた家。


耶万のおみが休んだり、光江の民を調べるのに使っている。



耶万に組み込まれた国の多くは立て直したがうね、悦、大野、光江、安の五つは今も食べ物、着る物、暮らしに要る物も分け与えられている。


なのにいくさを仕掛けたり、攻め込もうとするのだからドウしようも無い。




「なぁ、アコ。」


「なんだい。」


「国一つに一人づつ、兵を生きたまま戻さないか。」




朝になったら闇の種を植え付け、片付ける。話し合って決めた事だ。けれど全て光に変えれば、また違う兵が送り込まれるだろう。


どんなに多くの兵が押し寄せても、耶万社の皆で力を合わせれば纏めて消せる。消して無くせるが、また同じ事を繰り返すダケ。




「そうだな。」


アコが夜空を見上げ、呟く。


「誰がドコの兵か分からないと、残すのは難しいよ。アサに来てもらわないと、ザクが選んでもさ。」


耶万の祝人アサには獲物の足元に闇を展開し、取り込んで魂を抜く力がある。


「うん、分かった。アサを呼ぼう。」




風見かぜみから倭国しずのくにに贈られた勾玉まがたまは闇喰らいの品で、今もわざわいもたらしている。


それダケでは無い。


真中まなか七国ななくにで人のむくろから、鬼がボコボコ生まれているとも。



早稲神わさのかみの使わしめ、さねは狐だが鬼とも付合いがある。夜生神よいのかみの使わしめ、月隠つくもは外に出る事を嫌うが、真中の七国を調べたそうだ。


二妖で確かめた事。まことだろう。




多紀たきから真中の七国、全てに光の雨が降った。そう聞いたケド足りないのかな。」


「アコ、気にするな。と言っても気にするよな。」


「気になるね。」




今のトコロ、光江に押し寄せる兵は人。


人でもおにでも妖怪でも、生き物なら闇の種を植えられる。けれど暴れたり引っこ抜こうとすれば、実がはじける前に死ぬ。


光の雨が降っても、直ぐにんでしまう。




「鬼の話は早稲神、夜生神から大蛇神おろちのかみの御耳に。狭間はざまの守神が議られ、大祓おおはらえの御許しが出たとも聞く。だから七国に一人づつ戻そう。それにアレ、全て弾ければ闇が集まる光江でも、少しは清らになるさ。」


「そうだね。ありがとう、照。」


アコの姿がひかると重なり、ハッとする。


「母さんの事、思い出したのかな。」


「アコの目は煇と同じだ。とても優しく、美しい。」


アコが黙って照を撫で、微笑む。


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