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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
七国統一編
1252/1590

14-43 もう戻れない


真中まなか七国ななくには変わらない。


生まれる子も育つ子も、ウンと少なくなった。なのにいくさに駆り出され、そのまま戻らない。


足りないからと、幼子おさなごまで。




「鳶?」


港と沖の間に浮かぶ舟。みよしに鳶が一羽、止まっている。


上手うまいな。」


ヒョイっと釣り上げ、魚籠びくにポン。また釣り上げた。舳の方へ投げたのか、鳶がくわえて羽をバタバタ。


「加津の女だ。」


編んで纏めた髪に赤い布を結んでいる。貝の首飾りをしているし、加津の娘に違い無い。


「グヘヘ。」


兵頭が下卑げびた笑いを浮かべる。


「・・・・・・えっ。」




舟に乗っていたのは妖怪の国守ミカ、その娘イイ。


ミカの姿が見えなかったのは、ゴロンと寝転がっていたから。イイが釣りをしていたのはロロのため。



加津神かづのかみの使わしめ、ロロは鳶の妖怪。


昔は死んだ獣や魚のむくろを食らっていた。けれど、もう戻れない。取れ立てピチピチの味を覚えてしまったから。




「ロロさま、そろそろ。」


「ウム。」


ゴックンしてから飛び立ち、船団の上をグルリと一周。それから耶万やまへ向かう。




ミカが闇を伸ばし、串刺しにしたのは水手かこに兵頭。イイを舐めるように見たつわもの


ボタボタ流れる血が海を染めれば、ハイその通り。現れますヨ。毎度おなじみ、ワクワク和邇わにさんズ。




「ギャァッ。」


加津の港を奪い、言えないような事をアレコレ考えた。相手は国守、それも妖怪。隠せません。


「囲まれたぁ。」


海に落として良いのは人だけ。舟とか戦の具とか、腐らないモノは沈めません。






「これこれ、ワクワクを抑えなさい。」


海神わだつみのかみの使わしめ、こうひれをヒラヒラさせながらニコリ。


「ハイッ。」


和邇さんズ、キリッ。




釣り人や渡り人を襲ったりパックンすると、ソレはソレはキツク叱られる。だから言い付けを守り、ズラッと並んで待ってマス。



和邇さんズが囲むのは、ミカの闇に掴まれた舟だけ。他は知らんぷり。


とはいえ相手は地上最大の肉食動物。ホッキョクグマや地上最大の動物、クジラをも襲う海の殺し屋。『恐れるな』と言っても無理ムリ。




「急げ、漕げぇ。」


水手はモチロン、兵も椀やら何やら持ってセッセと水を搔いている。




加津に近づき、イイを舐めるように見たのだ。怒るのは当たり前。メラメラと燃え上がる強い感情が闇に現れ、千手観音菩薩せんじゅかんのんぼさつの御手のよう。


ミカは体長30m、体重200tの白長須鯨しろながすくじらでも一撃で仕留めるからネ。強いヨ。



海中では最高時速80㎞で移動し、鋭い牙で攻撃を仕掛ける和邇。頭も良いので仲間と連携し、獲物を捕獲する。海においては敵ナシ。


そんな和邇でもミカの前では皆、良い子になりマス。だってコワイもん。




「うわっ。」


入海いりうみでもソレナリに揺れる。急げば急ぐほど、慌てれば慌てるほどシクジる。


かいを舟に激しく打ち当てて折ったり、ツルっと手放したりネ。


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