表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
七国統一編
1251/1594

14-42 変わってほしい


真中まなか七国ななくにがザッと清められた。けれど光の雨が降る前に漕ぎ出した舟は、濃く深い闇を纏ったまま。


そんな舟が中の東国ひがしくに明里あかりの沖に現れた。




「またか。」


沖から一隻、松川に入った。


「おや。」


続いて入ると思われたが、沖で待っている。




松田に入ったつわものさかさに吊られ、松裏まつうらで死ぬ。舟と残された品は良く調べ、明里で使ったり他に渡す。


いつもの事だがドウなんだ?




「浦辺へ向かう気か。」


悪取神あとりのかみが右の御手を伸ばし為さる。と同時に張り巡らされた糸が垂れ、タプタプ袋が大きく開く。




水を離れた舟が引っ繰り返され、乗っていた兵も積まれた荷も纏めてジュジュジュと融けた。


沖からでも見えたのだろう。急いで東へ向かう。



もし真中の七国に光の雨が降ったと、漕ぎ出す前に知っていたら。そう思わずにイラレナイ。


いくさに駆り出されて飛国に入り、海に出て火の山島をグルリと回り、大貝山の統べる地へ。



生きるため、生まれ育った地を離れたのでは無い。戦を仕掛けるために来た。


断れなかったのか、他に選べなかったのか。何か有るのだろうが死ぬ。




「漕げ漕げ、離れろ。急げぇ。」


松田、浦辺にも入れない。なら加津かづの港を落とし、アレコレ奪おうと考えたのだろう。


あけみ加津社かづのやしろへ。」


「はい、悪取様。」



松裏と浦辺の真中、崖上からタッと加津へ向かう。糸の上に上がり、そのまま駆けてネ。






「もう嫌だ。」


兵の一人が呟いた。


「あの話、まことだったんだ。」


違う兵が目を伏せる。


「死ぬのかな。」


幼い兵がポツリ。




真中の七国はいくさ、戦でボロッボロ。


子が生まれても育たず、育っても弱く、多くが三つで死ぬ。なのに育った子まで戦に駆り出され、腹を空かせたまま死んでゆく。


子を産め、育てろ。そう言われても食べる物が無ければ乳が出ず、産んでも弱って死んでしまう。


中の東国や南国に移り住みたいが、山を越えたり海に出るのは難しい。中の西国も真中の七国と似たようなモノ。なんて聞けば、もう諦めて死ぬしかない。




「死ぬ前に腹いっぱい、食べたかったなぁ。」


中の東国は豊かで、美味しい食べ物がイッパイある。そう聞いた。


「戦好きを押さえられる、そんな国にさ。」


生まれたかったよ。




良く聞くのは岸多きした近海おうみ万十まと氛冶ふや。他にもイロイロあるんだろう。戦嫌いで強い大国おおくにが。


風見と早稲から捨てられた耶万は、王やおみより社の司が強くなって変わった、豊かで暮らし易い、良い国になったって。




「変わるかな。」


「どうだろう。」


「変わってほしいよ。」




守りたい誰かを残して、こんなに遠くまで来た。『戦なんか嫌だ』『戦場に出たくない』。思っても言えなかったんだよ。


ごめんな。生きて戻れそうに無い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ