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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
125/1570

5-52 備えあれば患えなし


良村のある山に、名をつけた。良山よいやまだ。言い出したのは、ノリ。覚えやすくて良い。


木を切り、家も建てた。畑も作った。蓄えもある。シンが他の村と、良い取り引きをしてくる。


釜戸山の祝から許された、新しい村。『早稲から逃げ出した』などと、面と向かって言う人はいない。


近いこともあり、茅野と馬守の村が、特に良くしてくれる。ノリが、草谷の村との仲を取り持ってくれた。日吉との繋がりもある。




「シゲ、久しぶりだな。どうだ、良村は。」


「ん? なぜ、村の名を。」


木菟ずくから聞いた。」


「そうか。」


「で、冬は越せそうか。」


「いろいろ持ち出せたから、この冬はな。」



「なぁ、ゲン。その・・・・・・。」


早稲わさは終わりだ。悪い話が広まって、誰も逃げ込まない。むしろな、『早稲の他所の』人が作った、新しい村の話で、持切もちきりだ。」


「それって。」


「鷲の目から聞いた。」


「相変わらず、凄いな。」



「シゲ。冬を越せたら、な。」


「分かっている。助けて、連れて来るよ。」


「良村では、どうだ。」


「二年、いや三年。稲が実るまで、待ってくれ。」



「それも、そうだな。春が来たら、来い。」


「ん?」


「霧雲山の、種籾たねもみを渡す。」


「霧雲山?」


「そうだ。あの寒い山でも育つ稲だ。良村でも育つだろう。」


「ゲン。そんなモノ、どうして。」


「祝辺の守からだ。木菟か鷲の目が、届けてくれるらしい。」



人のいざこざを収めるのは、釜戸山。妖怪のいざこざを収めるのは、乱雲山。どちらかに偏らず、正しいと認められる様を示すのが、霧雲山。その霧雲山を守る、祝辺の守。


その怒りにふれれば、灰すら残らないと言われる。強い力を持つ祝にしか務まらない、他に並ぶもののない守り人。その祝辺の守から、宝とも言える種籾を?



「ゲン、疑うわけではないが。」


「嘘でも、夢でもない。」




にもかくにも、冬を越す。出来る限り、備える。備えがあれば、何かあっても、応じて事を行えるはずだ。


狩った獣の皮を剥いで、なめした。肉は米と引き換え。刈り取った後、受け取る。そう取り決め、渡した。


なめし革も、米と引き換える手筈を整えている。少しでも多く米を蓄え、冬に備える。


薪はあるから、凍えることはない。冬の熊肉は美味い。しかし、狩れるとは限らない。とにかく、米だ。

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