14-40 お急ぎください
風見で作られ、闇喰らいになった石器が清められた。のだがナゼか消えない、無くならない。
テイと違って形が残っていたからか、人にドウコウできる品では無かったのか。
「闇を喰らい過ぎたのでしょう。」
と言いながら、実が青い狐火を展開。
「ギャァァッ。」
石器に取り込まれた魂、叫びながら大暴れ。
「逃がしませんよ。」
口調は優しいが眼光は鋭い。
清め水にも祝の力にも負けなかったソレが、音もなく消滅。と同時にグイっと迫り、微笑むコンコン。飛び出したのはトンデモ発言。
「そうそう。『倭国には風見から贈られた勾玉がある』と、狐の会で聞いたのですが。」
モフン。
「黒目、は耶万か。ん、勾玉。」
勾玉は歪曲した玉の一端に穴を開け、糸を通した装身具の一種。縄文時代から古墳時代に作られた、日本独特の飾玉である。
奈良時代以降も寺社で荘厳具、祭器として使用された。らしい。
「風見神。」
「いや、そのアレだ。」
「禍を?」
冷や汗ドッバァ。
早稲の外れで見つかった石は、そう古いモノでは無い。けれど倭国に渡った勾玉は?
拾った石で作られたモノなら良いが、もし違っていたらドウなる。
あぁ、次から次へと。いや待て。その前に急ぎ、呪い石を何とかせねば。
「瀧、碎。獣から出たコレを、急ぎ。」
「宜しいのですか。」
実に問われ、ハッ!
闇を引き出して固め、砕くハズだったモノが逃げ出した。ソレは己を持ち、獣の体を奪って動き回る。もし他にもあれば、真中の七国で闇を取り込めばドウなる。
考えるマデも無い。
耶万には強い清めの力を持つ祝女、強い守りの力を持つ祝人。社の司は蛇谷の祝の子、闇を光に変える力を持つ。引き渡せばスッと清めるだろう。
けれど消して無くす前に力を強め、また逃げれば困った事になるゾ。
「お急ぎください、風見神。その石は闇を求めて動き、禍を齎します。」
耶万社から戻った黒目、シュルシュル這いながら力説。
「黒目ぇぇ。」
ガシッと掴まれスリスリ頬ずり。
「あにょっ。大祓にと、マノさまが。」
耶万神の使わしめ、マノは蛇の隠。闇に強い。
大祓するならと、風見に来てくれた。
「ウム、急ごう。」
耶万社から大貝社、大貝社から和山社へ根回し済。天つ国と根の国から御許しをいただき、大祓の儀が始まった。
風見の北にマノ、南東に黒目、南西に実。同時に一線を引き、風見神が御力を揮われる。
「ギエェェェ。」
呪い石からボッと、黒い煙が上がる。ソレは取り込んだ闇で、人の世に残された思い。
この度の大祓、三日三晩も続きました。
黒蛇だった黒目、白くなったと気付き絶叫。風見から倭国に流れたと思われる勾玉を、直ぐに調べなきゃイケナイのに悶絶。