14-35 今の若いモンは
腹ペコ熊サンに襲われる事なく、大磯川を上がった。
兵の数が多かったので大野、采に別れて進む。
「しっかり休め。」
采のサゴ、兵を見下してニヤリ。
「はい。」
『言われなくても休むよ』と思いながら、腹から声を出した兵たち。疲れすぎて吐きそう。
うわぁ。加津と千砂から聞いた通りだ、イッパイ居る。
真中の七国って人、減ってるんだよね。なのに倭国は違うの? いや待てマテ良く見ろ。イロイロ混じってるゾ。
「さぁて、引き摺り込むか。」
耶万の祝人、アサが獲物の足元に闇を展開。
「ヒッ。」
サゴが闇に落ち、耶万の獄へ送られた。
ウゲッ。何だよココ、ギットギトだ。サッサと終わらせて耶万に帰ろう。エッと、ドコだ。ドコに居る。
「食べ物が無いだ? 当たり前だろう。その辺りの草でも食ってろ。」
大野のゴズに睨まれ、兵が項垂れる。
「はぁ。」
フラフラと森へ向かう。
「ナッ。」
何が『はぁ』だよ。と言おうとしたゴズ、闇に落ち見開く。で、そのまま耶万の獄へ送られた。
息が出来ない、苦しい。何だ、何が起きた。ドウなっている。・・・・・・声が、出ない。
「イデッ。」
何かの上に落ちた。と思ったら、ソコに居たのは。
「サゴ?」
「ゴズ! ゴズか。」
耶万の獄は仕置場の横に在る。
刑に処されるまで入る『待ちの獄』、取り調べが行われる『調べの獄』。耶万の外れに立てられた、切り取られた罪人が入れられる『垂れ流しの獄』の三つ。
「何かココ、臭くナイか。」
「あぁ、匂うな。」
本来なら『待ちの獄』に入れられるのだが、空きが無いので『垂れ流しの獄』に放り込まれた。
切り取りませんヨ、植えるダケ。
「浦辺にも、加津や千砂にも近づかなかった。連れ帰った兵を民として、采や大野で受け入れるなら見守ろう。そう思っていたのに。」
耶万の社の司、アコが目を細める。
「もう『呪い』としか思えない。」
悦、采、大野、光江、安の民は揃って戦好き。弱いのに、人が少ないのに減ったのにナンデ?
「悪いが。」
好きで闇の種を植えるワケじゃナイ。
「何だジジィ。」
「縊り殺すぞ。」
「・・・・・・ハァ。」
『今の若いモンは』なんて思わない。けれど誰だって年を取り、爺婆になるんだよ。
「確かに、ヌシらより長く生きている。」
早いモノですね。あんなに幼かったアコが恋をして、契って親になりました。
「アオ。」
「はい、アコさま。」
祝女アオには闇を思い通りの形に変え、操る力がある。
その手に持っているのは猛毒、『耶万の夢』。