14-34 お伝えしました
ゴズとサゴを乗せた舟が大磯川を北上。
『あの森の北まで漕げ』と言われたが、陸に上がったのは白い森が対岸に広がる地。
「オーン。」 ミツケマシタ。
「オォーン。」 クマノカリバデス。
「オーン。」 モドレ。
「オーン。」 ハァイ。
黒狼族が千砂と吹出山の間から東、大磯川の近くで野営する一団を発見。
ソコは熊サンお気に入り地点。ドッと降った雨が洗い流したが、それまでは赤い花が咲いていた。
「大神だ。」
「山神の使いに囲まれた。」
はい。吹出の社憑き、使い狼のウコです。
黒狼族の長で妖怪の黒狼。狼だモン、いつだって群れを率いて行動するヨ。
嫌だな、人なんて食べないよ。冬じゃナイもん。
アッ、違います。冬は食べ物が少ないので、行倒れの人を。骸だよ。死肉をね、いただきマスの。オホホのホッ。
「クヮァッ、眠い。」
吹出神の使わしめ、羽葉は大烏の妖怪。昼行性なのでオネムです。
「倭国の兵ですよ、アレ。」
ウコ、控え目に進言。
「暴れ川に出ても祝辺の守が力を揮う。捨て置け。」
ムニャムニャ。
「大野と久本の間に風見が、何かアブナイのをババッと仕掛けました。毒ですよ、アレ。」
「ウコ、聞いとらんぞ。早ぅ言わんか。」
「・・・・・・三つ前の夜、お伝えしました。」
ジトォ。
「ん?」
風見が仕掛けたのは毒だが、耶万の夢と違って獣に優しい。と言うより獣が嫌う匂いがするので、口にするのは人だけ。
久本は南西に在った、耶万に滅ぼされた国。風見と同盟関係にあったが裏切り、采と大野と結んで耶万に寝返るフリをするも、あっさりバレた。
生き残りは奴婢となり、多くが酷使され死亡。信仰心を持たない子が残り、風見と耶万を恨みながら成長。
耶万の夢の製造拠点の一つだが、飢える事も凍える事も、戦に駆り出される事もなく暮らしている。
なのに今でも風見、耶万を奪おうと考える輩がウヨウヨしているのだから遣る瀬無い。
「悪かった。」
少し考え、思い出した羽葉。素直に謝罪。
ウコから知らせを受ける前、風見社から使いが来た。森に罠を仕掛けたが、狙うのは久本と大野、采の生き残りだと。
早稲は毒の扱いが上手く、良く効く薬を持っている。だから村なのに風見と対対の付合いをし、いつでも国に出来るのにシナイ強い村。
「千砂からも知らせが。」
「はい。国守の子、ヨヨが先見したと。」
ヨヨは先見の力を持つ、人と妖怪の合いの子。
初めは闇に限られていたが、今では祝の力より強い。先読は出来ないがハッキリ見えるので、千砂の民は健やかで長生きすると言われている。
「耶万が動くなら、このまま見守るか。」
「はい。」
そうして下さい、お願いします。