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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
七国統一編
1242/1594

14-33 そんな顔するな


耶万やまいくさを仕掛け、破れて組み込まれた国。


その多くは会岐あき、大石、加津、腰麻こしま千砂ちさのように少しづつ持ち直し、穏やかに暮らせるようになった。


けれど中には耶万を打ち倒そうとあせり、競う合うような物言いや行いをする国もある。それが悦、うね、大野、光江、安の五つ。



中の東国ひがしくににも風見かぜみ早稲わさのように、戦で良い思いをしようとする国も在る。


けれど多くが大国おおくにか、いつでも国に出来る強い村。隙なんて見せない。だから真中まなか七国ななくにを狙った。


七王を口説き落とせればつわものを出させ、耶万に仕掛けられる。そう考えたのだ。






「なぁゴズ、オカシイと思わないか。」


采のサゴが声を掛けた。


「ん、何が。」






飛国とのくにの兵は悦のモウ、光江のカンと共に松田で捕らえられ、松裏まつうらに運ばれ合いの子に食い殺された。


ソレを見届けたモウとカンは耶万のひとやへ送られ、社の司に闇の種を植えられる。



実がはじけ死に、光の雨を降らせて消えて無くなった。



倭国しずのくにの兵は安のゴリと共に浦辺へ向かったが松川に引き込まれ、松田で捕らえられ松裏へ。


兵が合いの子に食い殺されるのを見届け、耶万の獄で闇の種を植えられた。



真中の七国、多紀たきに送られモウとカンと会うも実が弾け、死ぬ。


光の雨を降らせ、消えて無くなった。






「何がって、浦辺には倭国の兵がさ。」


「ゴリの事だ、奥へ進んだんだろう。」




ゴズもサゴもモウ、カン、ゴリが死んだ事を知らない。先に送られた倭国の兵、飛国の兵が戻らない事も。




「ハハッ、そうだな。水とかさ、奪いに行こうぜ。」


「奪うってサゴ、どこで。」


「決まってるだろう、加津だよ。」


めとけ。加津には、千砂にもバケモノが居る。」




采は大磯川から西へ入り、ずっと進んだ先にある。大野は大磯川の東、少し進んだ所。海まで遠いが、出ようと思えば出られるので知っている。


千砂と加津に妖怪の国守が居る事を。




「バケモノったって人だろ。」


「違う! アレは人じゃない。」






死んでおにになり、イロイロあって妖怪になった。


人のときに留まり国守になったのは、生まれ育った地を守るため。


生き残った合いの子を引き取ったのは、生きたくても生きられなかった親から託された、たった一つの宝だから。


だから慈しみ、育てている。



妖怪の国守に引き取られた合いの子は、明里あかりの子とは何もかも違う。


まず、妖怪の血が濃い。父が誰なのか分からないが、母が生まれ育った地で生まれた。合いの子だがやしろの子ではナク、国守の子として生きている。






「・・・・・・分かった。だから、そんな顔するな。」


サゴが諦めたと知り、ホッとする。


「千砂、いや白い森の北まで進もう。そしたら川から上がってさ、ゆっくり休もうぜ。」


「あぁ、そうしよう。」






浦辺に泊まっているハズの舟が一隻も見当たらず、このまま休まず川を上がると知った兵たちは思った。このまま進んでも良いのか、と。



大磯川の向こう、加津との間に舟が一隻。釣り糸を垂らしているのは親子だろうか。


何となく喉元に剣を突きつけられたような、とても嫌な感じがする。






「オイ、あの森の北まで漕げ。」


「はい。」



兵たちは逃げるように漕ぎ、大磯川に入った。


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