14-31 始まったか
この度、宿主になったのは悦のモウ、光江のカン、安のゴリ。
芽吹き葉を広げ花を咲かせ、つけた実がドンドン巨大化。鈴生りの実が放射状に飛び散り、爆発と同時に光の雨を降らせた。
多紀を襲った集中豪雨はアッと言う間に七国を襲い、闇が噴き出さなくなった。
けれどソレは闇を濃縮させ、大祓では消滅させられないアレコレを浄化させるキッカケになったダケ。
終わりではない。
「始まったか。」
鳰海神が呟き為さる。
「はい。」
湖面を打つ光の雨が、漂う闇を浄化してゆく。
耶万の社の司、アコが持つ力は強大だ。
光を飲み込む強い闇の力を母から受け継ぎ、眠っていた力が目覚めた瞬間、対象に闇の種を植え付けて光に変える力を獲得。
王の倅だ、耶万王になれる。
しかしアコは社の司に、人の長になって耶万を治める事を選んだ。蛇谷で起きた事を繰り返さぬよう、煇の子として生きると。
「うっ。」
笠国を治め為さるのは蚕の神。孵化して早早、大祓に駆り出された。モチロン使わしめ付き。
「耐え為さいませ、前狭神。」
使わしめ光絹は大陸で生まれ育った、腹の白い黒猫の妖怪。戦嫌いの自称、穏健派の猫又デス。
「く、桑の葉。」
幾度も代替わり為さるも、その度に光絹がキチンと御育てするので闇堕ちゼロ。
「務め、果たされませ。桑の葉は逃げません。」
この度も禍津日神として現れ出られた。けれど光絹による強制『転換』教育の成果か、キリリとして御出でだ。
「ひゃい。」
ピチピチの毛蚕、プルプル。
弓良神と勢多神は川の神で在らせられる。
いつもなら支えとして御力を揮われるが、この度は違う。
九柱の内、七柱は代替わり為さって直ぐ。アチコチから噴き出す闇を薄めるか、何とかして固めなければ祓い清められない。
多紀神、子神八柱も真中の七国、全てに光の雨を降らせるために御力を揮われる。
大祓の前に染み込んだ闇ごと、地の中から消して無くされた。
「ひゃっ。」
駒国を治め為さるのは山神。いろいろ鍛えられた結果、身体能力が恐ろしく高く御なり遊ばす。
「甲賀神。腹を打て、と?」
使わしめ音は、オス狸の妖怪。
「いや、止せ。」
代替わり為さる度、音が男児に化けて御育てするのだが、ポンポコ腹を打ちながら叱咤激励するので正直、聞きたくない。
「そうですか。」
しょぼぉん。
「気持ちは嬉しい。」
ぱぁぁ。
真中の七国は呪われているのか、戦ばかり繰り返す。
数多の神が御隠れ遊ばし、現れ出られるのは禍津日神。
代替わりで直日神が禍津日神に御なり遊ばした。なんて話が、アチコチにゴロゴロしている。
「ウヲォッ。」
剛国を治め為さるのも山神。軍神として出現なさっても、山を守る事に全力を注がれる。
教育って大事だね。勤倹尚武な神に御なり遊ばした。
「無患子神。」
使わしめ弦は奉納された弓に隠が群がり、妖怪化した大の戦嫌い。
スパルタ以上に厳しい規律・鍛錬を重視する厳格な教育を施すのは、戦で死ぬ魂を減らしたいから。