14-30 花火より
体中から芽が出て葉を広げ、ポポンと花を咲かせた。
モウとカンの顔が柱頭に現れ、花柱をグワングワン動かしながら大暴れ。その度に花糸が伸び、花弁を散らせる。
「ごめんください。お届けモノです。」
耶万神の使わしめ、マノ。黒蛇の隠で闇にも強いヨ。
「お久しぶりです、マノさま。こちらへ。」
八生の尾を掴んだまま、モモが大きく手を振った。
「檻に入れますか?」
「お願いします。」
シュルシュルと近づき、柵の間に安のゴリを押し込み、尾でバンと打った。
「ギャッ。」
ビュンと飛び、幹にゴン。
「アッ、アッ、アァァ。」
多紀は真中の七国の、真中に連なり聳える山。闇の種を植え付けられたゴロツキ三人が放り込まれたのは、使わしめ八妖が作った檻。
八角形なので崩れ難く、人の力では壊せない。
「イヤダ、ダズゲデ。」
メリメリ音を立てながら、根が血管を裂いてゆく。
「ジニダグナイ。」
口と鼻、耳からも血を流し目玉が飛んだ。
耶万から届けられた追加が、発芽と同時に急成長。闇の木が三本、交互に編み進みながら葉を広げる。
咲き誇る花から伸びる花糸が、特別仕様の檻を破壊しようと鞭のように撓う。けれど傷一つ付けられず、焦げて黒煙が上がるダケ。
「ギョォォォ。」
柱頭に現れた破落戸ども、三人仲良く大騒ぎ。
「ゴォォォ。」
葯が落ちた拍子に破れ、ブワッと花粉が舞い上がる。隆起した根が隠れるホド濃くなったソレに、タップリと闇が染み込んだ花弁がボタボタボタ。
落ちても破れなかった葯も花糸に打たれ、粒状の細胞が細かな塵になって浮遊。
花柄がグワングワンと揺れる度、花床に守られた子房が膨らみ、萼が捲れた。
「ヴゥゥ。」
ブヨブヨした実がボンボン落ちて、固い胚珠に直撃。と同時に火花が散り、柱の中に飛散していた花粉に引火。
「ヴォォォ。」
モウ、カン、ゴンに植えられた闇の種が芽吹き、育った結果がコレ。真中の七国に溢れる闇を吸収し、巨木になって苦悶している。
「ヴゥゥゥ。」
急速に引き伸ばされた実に、紫赤色の線が入った。
「ヴ、ギィィ。」 モウ、タエラレナイ。
八生が膝をつく。
「シッカリなさい。」
モモに尾を引っ張られ、マノには尻を叩かれ、元から赤い尻が深紅に染まる。
「ヴギィッ。」 シリガサケルゥゥ。
八生の悲鳴に共鳴したのか、闇の実がドンドン膨らむ。その大半が風船のように透け、今にも弾けそう。
ヴゥゥ、ヴァン! ヴァンヴァン、ヴァヴァン、ヴァン。ヴゥゥ、ヴァヴァヴァヴァヴァン。
花火より派手に破裂した闇の実が、闇に汚染された真中の七国に、物凄い量の光の雨を降らせた。