14-29 見えなくても
七妖が手厳しいのは、八生が逃げる気マンマンだったから。というワケではアリマセン。
八生は生前、白子の蛇や鳥を嬲り殺した悪い猿でした。そんな野猿の隠が八つ集まり、愚痴っていたら妖怪化。
白子と高山鳥から敵視されており、陽嶽から出ようとしない。
正しくは『怖くて出られナイ』のです。
「もうしません! お許しください。この通りです。」
歯をカチカチ鳴らしながらブルブル震え、額を地に付け命乞い。
「皆さま、そろそろ。」
鳰海神の使わしめ、潜が微笑む。
「はい。」
兎の垨と蛇の瑞が馬サイズになり、猿を見下ろす。慌てて巨大化した八生が位置についた。
小鳥のジュリ、弥生、ガア、声飛。中形の雪羽も鷲鵂サイズになり、空中待機。
「お願いします。」
潜が湖から叫ぶ。と同時にモウとカンが鳰の海から放り出され、垨の背で蜷局を巻く瑞の上に落ちた。
「とりゃぁ。」
兎と蛇が本気を出し、モウとカンを飛ばす。
「ヴギィィ。」
八生が飛んできたボール、ではなくモウとカンを打ち上げた。
ビリッ。
「・・・・・・ウキ?」
モウとカンが入れられていた袋が裂け、♪ビリビリ破けて、さぁタイヘン♪
「ヒッ。」
「ヒャッ。」
落下するモウの頭を雪羽が嘴でキャッチ。
腹をカプッと銜えたのは弥生。カンの右腕をジュリ、左腕をガア、尻を飛声が銜えて多紀山へ移送。
「皆さぁん、こちらへ。」
モモが多紀連山の真中、少し開けた地で手を振る。
三方に分かれ垨と瑞、八生が向き合うのは直ぐに囲うため。
「エイサ、ホイサ。」
モモが向かったのは八生の後ろ。
監視しますヨ、逃がしません。
「ギャッ。」
「グヘッ。」
中央にカンとモウを落とし、ジュリたちも位置についた。と同時に八角形の檻が現れ、方方から闇が集まる。
「ウギ、ウギギギィ。」 モウイヤ、ヤシロニカエリタイ。
八生は逃げたくても逃げられない。大事な尾をモモに、多紀神の使わしめにガッチリ握られているから。
「気を抜くな。」
「ヒャイ。」
モモに叱られ、背筋ピィン。
ボコッ。ボコボコ、ズボッ。ビシャァ。
悦のモウと光江のカンに植え付けられた闇の種が、真中の七国に溢れる闇を取り込みながら芽を伸ばす。
皮膚を突き破り葉を広げ、ワサワサと茂って目玉がビュン。檻に当たってジュッ。
「目が、目がぁぁ。」
見えなくても分かるのか、目玉が飛んだ方に枝を伸ばて葉を揺らす。
「死にたくなァァァァァ。」
喉の奥から茎がボンと出て、太い枝になった。