14-28 働きますから
悦のモウ、光江のカン、安のゴリも王から預かった兵を失い、捕らえられた。はじめにモウとカン、続けてゴリが放り出され、弾けるだろう。
何も知らない大野のゴズと采のサゴは、倭国王を口説き落とせてニッコニコ。海に漕ぎ出すため、兵を引き連れ、飛国へ向かっている。
「グルジイ。」
どうなっている、ココはドコだ。
「ダズゲデ。」
ドコへ向かっている、殺されるのか。
何か分からないが胸に『何が』が植えられ、体の中で大きく育っている。それダケでも辛いのに、苦しいのに叫ぶ事も出来ない! と嘆くモウとカン。
耶万から鳰の海、鳰の海から多紀へ流すように運ばれているのだ。
死なれては困るので守られているが、生きている人には狭くて細い道。骨が砕けたり腸が潰れてもオカシクない。
「ソロソロか。」
多紀神の使わしめ、モモが呟く。
「皆、頼みます。」
キリリ。
「ハイッ。」
耶万のアコは蛇谷の祝、煇の子。蛇谷の祝に憑く蛇を従え、強い闇の力を揮う。出雲お呼ばれ組の中では知られた話。
多紀神には八柱の子神が御坐すが、神在団子に思いを馳せながら御山に籠られる。
えっ、話が読めない? 失礼しました。
鳰の海と多紀山の間でワクワクしている愉快な仲間たち、八妖をザッと紹介します。
多紀山の西北、渓流に御坐す天流神。使わしめジュリは目細虫食の妖怪。
多紀山の西にある岩の裂け目、根の国に繋がる水脈の戸を御守り遊ばす伊戸神。使わしめ弥生は茅潜の妖怪。
多紀山の西南、渓流に御坐す岩流神。使わしめガアは星鴉の妖怪。
多紀に連なる御山の一つ、雲掛山に御坐す雲海神。使わしめ雪羽は雷鳥の妖怪。
白子なので年中、純白デス。
御嶽の北、頂の大岩に御坐す標神。使わしめ声飛は岩雲雀の妖怪。
多紀に連なる御山の一つ、陽嶽の頂に御坐す陽嶽神。使わしめ八生は野猿の妖怪。
御嶽の東、風穴に御坐す峰蛇神。使わしめ瑞は山楝蛇の妖怪。白子です。
御嶽に御坐す御嶽神。使わしめ垨は野兎の妖怪で人の姿に化け、山を荒らす生き物を谷底に落として殺処分。
多紀山のテーマソングを歌うのが大好きな、あの兎チャンです。
「八生、ドコへ行く。」
「ウキッ。」 キヅカレタ。
「谷に蹴落とすぞ。」
「いヤだナ、垨さま。お目が怖イです。」
ウキキ、キキッ。
「鳥など恐れぬ、逃げられると?」
ジュリ、弥生、ガア、雪羽、声飛に睨まれタジタジ。
「ハァ、噛むか。」
瑞が牙を見せた。
「止めて、死にたくない。」
山楝蛇は歯の奥に毒腺を持ち、深く咬まれると致命的。
「働きます。働きますから、お願いします。お助けくださいぃぃ。」