14-27 もう芽吹いた
松田に到着して直ぐ、何かに吊り上げられた倭国の兵が放り込まれるのは囲いの中。
「ワッ。」
下から何かが飛んできて、両の足首を引っ張った。左右から飛んできた何かが手首を引っ張り、頭がスッキリしてゆく。
「あ、れは。」
知らない生き物が、真中の七国から連れてきた兵を食べている。
「人食い。」
囲いだと思ったモノは風や雨に曝され、白くなった人の骨だった。
「ギャァ。」
食い散らかされてボロボロになった骸を見て、ゴリが声の限り叫ぶ。その声を聞いたバケモノが立ち上がり、ゴリに近づく。
「来るな、アッチへ行けぇ。」
手足が動かせないので腰を前後に振り、大暴れ。
ビュンと引っ張り上げられ、白い糸にグルグル巻きにされた。何が起きたのか分からず、叫ぶゴリの口に何かが詰め込まれる。
どんなに涙を流しても、涎を垂らしても息は出来る。けれど鼻水はツライ。
詰まらなければ胸いっぱい吸い込めるが、鼻を啜っても苦しいダケ。
「おやおや、シッカリなさい。」
思うように息が出来なくなり、ゴリの爪や唇が青黒くなっている。
「悪取神、このままでは。」
「そうだね。ありがとう、明。」
ナデナデされ、尾を振る使わしめ。とっても嬉しそう。
「遅くなりました。」
耶万社の祝人、アサが闇から飛び出し一礼。
松田の跡地に新しい国、明里が建てられた。
王は隠だが長は人。民の多くは他では生き難い、生き辛い人たち。
合いの子は悪取社に引き取られ、人と同じ時を生きる。明里に着く前に人を食らった合いの子は、他の合いの子と違う道を歩む。
松裏に隔離されるのだ。
飢える事も凍える事も無いが、幸せだとは思えない。
それでも他の地で暮らすより、ずっと長く生きられる。
「闇を植え付けるなら、御早く。」
悪取神が微笑まれ、アサが開いた闇にゴリをポンと放り込み為さった。
「ありがとうございます。」
「お気をつけて。」
「はい。」
ココはドコだ。確か、そうだ。松田から松裏に。
「ンゴ、ムゴゴ。」 オイ、ハナセ。
耶万の獄に放り込まれたゴリ、手足を縛られたままジッタンバッタン大暴れ。
「グッ。」
胸に痛みが走った。
「うわぁ、もう芽吹いた。」
耶万に着いて早早、闇の種を植えられたゴリ。気を失っている間に闇を吸われていたのに、気付いて直ぐに根を張った。
「ココじゃ困るんだ。ヤヤ、お願い。」
アサに頼まれ、育てのヤヤがニコリ。
「任せて。」
守りの力を丸め、ゴリの胸に投げ込んだ。
「ふぅ。」
決まった!
「・・・・・・痛そう。」
ヤヤは華奢だが、腕力が強い祝人。ムッキムキ。
「さぁて、知らせるか。」
「そうだな。」
ヤヤとアサが見合い、獄を後にする。