14-26 どうなっている
王に託された兵が全滅した事、悦のモウと光江のカンに闇の種が植えられた事も知らず、安のゴリが倭国の先遣隊を引き連れ、浦辺に仕掛けようと近づく。
「静かだな。」
飛国は若い兵を送った。
先に出た舟、全てがココまで来たとは思わない。思わないが静か過ぎる。
「オイ、あの川に入れ。」
水手に分かるように示し、腕組みして黙り込んだ。
倭国王は『松田を調べよ』と言った。
これまで多くの兵を送ったが、いつも戻るのは一人だけ。皆、酷く怯えて使い物にナラナイと。
「えっ。」
水手が驚き、櫂を持ち直した。
「何だ。」
ゴリに問われ、唇を噛む。
「流されて、違う。引っ張られています。」
舟がスゥっと松川に入り、流れに逆らって進む。怯えた水手が櫂を手放し、頭を抱えて震えだす。ソレに気付いた兵が見開き、『漕いでナイのに』と呟いた。
「オイ、どうなっている。」
ゴリが水手に問うが、頭を振るダケで何も言わない。
「ヒッ。」
「アッ。」
「ワッ。」
背後から小さな悲鳴が。
「何だ・・・・・・よ。」
兵が、舟に乗っていた兵が減っている。
「エッ。」
目の前で兵が、何かに吊り上げられた。
川に飛び込もう。そう思った時、倭国の舟が松田に流れ着く。と同時に残りの兵が消えてしまう。
「何が。」
逆さに吊られ、何かに手繰り寄せられている。
「ギャッ。」
見えない何がが右の足に絡みつき、ビュンと勢い良く空へ。
左の足と両の手をブンブン動かすが、ブランブランするダケで解けそうにない。
「死にたくない。」
「もう嫌だぁ。」
兵たちが叫ぶ。
松田は耶万に滅ぼされ、他じゃ生きられないヤツが隠れ住んでいる。そう聞いた。調べに行ったのが一人も戻らず、逃げたか住みついたんだろう。
そう思っていたのに何だよ。
「放せ、放しやがれ。」
叫んでも暴れても止まらず、クラクラしてきた。
「ドッチだ。」
東なら松裏、西なら椎の川。その先は死の森。
「海が左で、後ろに進んでいる。」
というコトは東。松裏か。
松裏は松田と結び、『松毒』を作っていた。松林の裏にあるから海から吹く風が届かない、強い国だと聞いたが何かが違う。
こんな力を持っていたら松田に使われたり、耶万に破れる事も無い。なのに負けた、滅んだ。
「ギャァァ。」
ビチャビチャ、ズルル。
「ダズゲデェ。」
クチャクチャ、ジュルル。
兵が一人づつポトポト落とされ、食われている?