14-24 ありゃりゃ
耶万の社の司、アコは煇の倅。蛇谷の祝が受け継ぐ清らで、とても強い力を生まれ持つ。
光を飲み込む強い闇は憑き蛇、照に認められなければ使い熟せない。
耶万社の継ぐ子たちは年を重ね、力を増した。中でもアコの強さはピカイチ。
「明里から耶万に送られた罪人の胸に、大きな闇の種が植え付けられました。」
ゴクリ。
「この地に溢れた闇を取り込み、忘れられない花を咲かせるでしょう。」
わ、忘れられないって。
「夢に出ますヨ。」
クラクラ、ふらぁり。
「モモさま、お気を確かに。」
シッカリせねば! 耶万から闇の種、いや苗が届く前に七国を巡り、代替わり為さった神を御連れする。大祓には九柱・・・・・・。
あれ?
笠国から前狭神、駒国から甲賀神、剛国から無患子神、倭国から寧楽神、瀬国から五色神、飛国から伊摩神、保国から壅坧神。
「ハッ!」
川の神。弓良神、勢多神に御頼みしよう。
「白蛇さま。お知らせくださり、ありがとうございました。」
モモが照に一礼し、姿を消した。
いつ闇が溢れてもオカシクない、そんな地に闇の種を植えた人を戻すのだ。多紀の御山の長で在らせられる多紀神、鳰の海に御坐す鳰海神にも御伝えせねば。
というコトで休まずニョロニョロ進む。
鳰海神は狭間の守神。御坐すは人の世の果て、生き物が暮らせぬ地。
ちょっぴりドキドキ。
「真中の七国が一つになれば、この地に漂う闇が大きく変わります。古い闇と新しい闇が引き合えば、恐ろしく強い力になるでしょう。ソレが齎すのは禍。」
照は知っている。人の世から争いが、戦が無くなる事は無いと。
「直日神が御隠れ遊ばし、禍津日神が現れ出られる。子が生まれても育たず、痩せ細って死んでしまう。そんな国から噴き出す闇に、人を幸せにする力はアリマセン。」
戦に破れて滅んだり、暮らせなくなって逃げ出したり、飛び出したりしても死んでしまう。
戦、戦の七国が一つになれば。なんて事を考えても、願っても叶わない。
「アコの力は強い。真中の七国に溢れる闇を取り込み、大きく育てば実を付けます。その実が弾ければ、光の雨を吸った地は一度だけ輝くでしょう。」
どんなに強い祝の力を持って生まれても、それは人にも扱える力。
「ウム。」
大祓を執り行うなら、ザッと清められてから。そうすれば九柱でも、真中の七国を丸ごと清められる。
そう考えるのか、照よ。
「狭間の地から使いを出そう。」
キリリ。
鳰海神の使わしめ、潜は鸊鷉の妖怪。
新生活に心躍らせながらに葦で浮巣を作っていたら、遊びで狩られて死亡。『殺すなら食えよ』と叫んだら鳰海神に慰められ、使わしめになる。
「ありゃりゃ。」
狭間の地から人の世に出て、大木の根本から首を出しキョロキョロ。それを見た垨、食べていた草をハラリと落としてバタン。
兎の心臓に悪かった、らしい。




