14-21 何で信じたんだろう
カンとモウは手足を張り広げられ、高いトコロから見下ろしている。
逆さ吊りされた兵が落とされ、見た事の無い何かに食い殺されるのを。
「ナッ、ナッ。」
何がドウして、コウなった。
真中の七国、飛国から中の東国、松田まで舟で来た。
戦に勝ち続けていた松田が破れ、そのまま組み込まれて耶万に。そう聞いていたのに違うじゃナイか。
何も無かった。
大国だった松田に残っていたのは、山を切り開いて出来た平たい地。家も田も畑も無い、見晴らしの良い地だけ。
「こ、こは。」
松田の東には毒の扱いが上手く、松田と結んでいる松裏がある。松田と松裏は近くの里、村や国に仕掛けて松田を大国にした。
「まつ、うら。」
ココは『松毒』で知られる松裏。多くの人が草や花を育て、森や海の毒を混ぜて強い毒を作っている。と、そう聞いていたのに。
地上から離れているのにビチャビチャと、獣とは違う何がが兵を食らう音が聞こえる。風が運ぶ血の匂いが、身動き一つ出来ないカンとモウを包む。
纏めて捕まり、松裏で処刑された兵たちは今わに思う。親や爺婆から聞かされた、あの話。
『中の東国には多くの祝が居て、己らとは違う力を使い熟す。祝の力は生まれ持つモノで、殺したり穢しても奪えない。』
アレは真だったのか、と。
「かぁさん。」
言い付けを破って、こんな遠くまで来ちゃった。
「ごめん。」
騙されてた、偽りだったよ。
飛国王の兵になって舟に乗り込めば、耶万との戦に勝てば腹イッパイ食べられる。
はぁ、何で信じたんだろう。
松田を滅ぼした国に仕掛けて、少ない兵で攻め込んで勝てるか? 負けるさ。
あぁ、何にも見えねぇ。けど耳は聞こえる。ビチャビチャ、クチャクチャ。
あはっ、食ってる食ってる。食われてるよ、みぃんな。
「ワッ。」
ピンと張り広げられていたカンとモウがイキナリ、白くて細い袋の中に落ちた。
「グルジイ。」
体の重さで、下へ下へ落ちる。
明里の獄ではナク、タプタプしない袋に入れられた。
透けないので何が起きたのか、ドコまで落ちるのかサッパリ分からない。
洞の奥か岩穴か、狭くて固いトコロに押し込められている。そんな気がするが、いつまで続く。
「起きろ。」
両の手を後ろで縛られ、獄に転がされていたカンとモウ。その顔にバシャンと水が掛けられた。
「ングッ。」
大きく息を吸い込みたいが猿轡を填められ、叫ぶ事も出来ない。
ココは耶万の獄。
力を揮ったのは獲物の足元に闇を展開し、取り込んで魂を抜く力を持つ祝人、アサ。その隣には心の声を聞き、伝える力を持つ禰宜、ザク。
「悦のモウ、光江のカン。今から闇の種を植え付け、真中の七国に戻す。」
耶万の社の司、アコの指先から何かが飛び出し、獄に転がっていたモウとカンの胸に入った。