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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
七国統一編
1229/1598

14-20 その願いは叶わない


岸多きしたから慌てて離れた飛国とのくにの舟が、ユックリと死の森に近づいた。



大貝山の統べる地の西端に在り、一柱も御坐おわさぬ空白地帯。


谷底を流れる椎の川は大きいが、恐ろしく流れが早い事。森のアチコチに毒キノコ、窪地くぼちから毒霧が発生する事から『死の森』と呼ばれるようになる。



しいの川を上がれば叢闇鏡むらやみのかがみを納める神倉ほくらが建てられ、神域化した蛇谷。更に上がれば専守防衛に努める軍事国家、実山みのやま


その北西には早稲わさと社を通した付合いを始め、守りを固めた谷西たにし。もっと上がれば暴れ川だ。






「西だ、西へ進め。」


光江のカンに言われ、つわものが肩を落とす。


「死の森に入れば死ぬし、椎の川は休まず漕がなきゃ岩に叩きつけられるゾ。」


悦のモウに睨まれ、大慌て。






明里あかりの北は白い森、南は海。東は大磯川、西は椎の川だったが椎の川口を守らせるため、川向かわむこうの谷まで明里領に編入。


椎の川口にも悪取の糸が張り巡らされたので、許し無く入ればプランと逆さ吊り。タプタプ袋に入れられシュワっとけるヨ。






「見ろ、松川の口だ。」


カンが川口を示し、ニヤリ。


「はい。」


ずっと漕ぎ続ける事は出来ないので、代わり合っているがクッタクタ。






耶万に滅ぼされた松田は山奥、と言っても海の近くにあった大国おおくに。松川を上がった先に手を加え、大きな舟寄ふなよせを設けた。


今も手入れされているのでシッカリしている。



松田や松裏まつうらに残されていた建物はバラバラにされ、他の地に移し建てられたので何も無い。


けれど舟寄を見た兵たちは思った。おかに上がれば里か村があり、足を伸ばして休めると。






「舟を水から上げ、奥に並べろ。流されるぞ。」


「はい。」






モウとカンが飛国王とのくにのきみから預かった兵を休ませるため、松川を上がって松田に上陸。舟から離れた兵がフラフラと坂の上へ。



胸を張って歩きたいが、腕が重くてダラリと垂れる。


腰を曲げているので、見えるのは少し先。ソレでも前を歩いていた兵がスッと消えれば立ち止まり、見上げる事は出来た。






「え。」


何かが足に絡まり、引っ張られてブラァン。


何とかのがれようと腹に力を入れるが、ビヨンビヨン伸びて糸が大きく揺れる。


「お、オイ。」


逆さに吊られるダケでも辛いのに、上に下に動けば動くホド頭がグワングワンして気持ち悪い。






索道さくどうの終点は松裏まつうら


冬山ならヒョイと降り、そのままスイっと雪滑り。夏山なら吊りかごから出て、自然を楽しみながらトコトコ歩く。


けれどココは明里のひとや。囲いの中でよだれを垂らすのは、人を食らった合いの子。






「ヒッ。」


スルリと糸がほどけ、真っ逆さま。


「ギャアッ。」


頭からガブリと食われれば一瞬だが、手足を引き千切ちぎられたりまたを裂かれれば痛みが長引く。


「ゴロジデェ。」


長引く痛みに耐えきれず、兵たちが死をこいねがう。けれど、その願い。直ぐには叶わない。


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