14-17 そう来たか
北の海を望む笠国は、中の西国と中の東国に戦を仕掛ける。
中の東国、斑毛山は昔から越道山と結び、支え合って戦うから奪い取れない。なのに仕掛けたのは中の西国。
因幡も伯耆も出雲からイロイロ手に入れ、守りながら戦える国になっていたから。
笠国王を口説き落とせないと踏んだゴリは引き、サゴが居る駒国に向かう。
斑毛山と畏れ山に接している駒国は、山を越えて戦を仕掛けていた。けれど仕掛ける度に押し返され、多くの兵と食べ物を失う。
霧雲山を落とせれば挟むようにして戦えるが、その前に大貝山を落とさなければドウにもナラナイ。
駒国王も口説き落とせず、ゴリとサゴは弓良川を越えて剛国に入った。
「ココもか。」
「諦めるな、サゴ。倭国が残っている。」
「そうだな、ゴリ。行こう。」
中の西国、因幡に接している剛国は山を越えて戦を仕掛けていた。が、勝てても奪えるモノは少ない。
中の東国から兵を奪えたとしても、連れてくるのに時が掛かる。
剛国王を口説くのは難しいと思っていたカンは直ぐに引き、モウが居る瀬国へ。
中の西国、吉備に接している瀬国は山を越えて戦を仕掛けていたが、得る物は少なかった。
中の東国からドウコウ出来ても運び込むのに時が掛かる。だから瀬国王を口説くのは難しい。
カンとモウは引き、ゴズが居る保国へ向かう。
「まぁ、難しいわな。」
ゴズから話を聞いたモウとカンが、頭を掻きながら溜息を吐く。その表情は険しい。
保国には早貝があり、中の西国や鎮の西国と上手く付き合っていた。だから戦を仕掛けても勝てないと踏み、南国と四つ国に攻め込む。
けれど幾度も破れ、その考えを改める。
何も知らないゴズは保国王を口説くウチ、何を言っても響かないと気付く。サッと引き、保国をアチコチ調べて回った。
飛国へ行く前にイロイロ仕入れなければ、大王を口説けないと思ったから。
「これからドウする。」
カンに問われ、ゴズがニヤリ。
「倭国へ行こうと思う。」
「エッ。」
ゴズに任されたのは飛国と保国。保国王の次に、飛国王を口説かなければイケナイ。
「飛国はドウする。」
モウに問われ、クククと笑った。
「飛国王は幾度も津久間に仕掛け、他と結ばなければ勝てないと分かっている。だから『大王の使いとして倭国へ行き、話を纏める』と言えば良い。」
ゴズ、モウ、カンは飛国へ行き、大王を口説き落とした。ゴズは飛国王の使いとして倭国へ行き、残ったモウとカンは兵と共に舟に乗り込み、中の東国を目指す。
「よぅ、サゴ。ゴリも変わりナイか。」
「ゴズ! 倭国で何をしている。」
サゴは見開き、ゴリはゴズをギロリ。
「飛国王の使いでな。」
駒国王、笠国王、保国王、瀬国王、剛国王も口説けなかったが飛国王は口説けた。
倭国王を口説ければ耶万、大貝山も落とせる。大貝山を落としたら、そのまま霧雲山へ攻め込んで奪う。
霧雲山を奪えたら畏れ山、畏れ山を奪えたら倭国と飛国に戻る。イロイロ整え倭国から駒国と剛国、飛国から保国と瀬国を落とせば、残るのは倭国と飛国。
どちらが勝っても思うように、多くの兵を動かせるだろう。
「ハッ、そう来たか。」